2003 Fiscal Year Annual Research Report
共役ポリエン類の光異性化反応における円錘交差の役割に関する理論的検討
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15550003
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
天辰 禎晃 秋田大学, 工学資源学部, 助教授 (90241653)
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Keywords | 非経験的分子軌道法 / 電子励起状態 / 光異性化反応 / 電荷移動状態 / 円錐交差 / π電子共役系 / 共役ポリエン |
Research Abstract |
共役ポリエン類のシス-トランス光異性化は、レーザー分光学、生物物理化学、光材料工学など広範な研究分野から興味が持たれている。しかしながら、その光異性化反応の合理的な描像は確立していない。その大きな要因の一つは光異性化反応が起きる時の緩和チャンネルとなる円錐交差(CIX)の情報がないことである。本研究課題は信頼性の高い非経験的分子軌道法により円錐交差を求め、その電子状態および幾何学的特徴から光異性化反応に関する新たな描像を提唱することを目的とする。 本年度は共役ポリエン類で最も基礎的なエチレンさらにブタジエン関連の分子のCIXを求めた。実際に検討した分子は、i)push-pullスチルベンの代表例である4-ジメチルアミノ,4'-シアノスチルベン、ii)スチレン誘導体である4-シアノスチレン、4-ジメチルアミノスチレン、4-ニトロスチレン、iii)1-ジメチルアミノ,2-シアノエチレン、iv)1-ジメチルアミノ,4-シアノブタジエン、の4系統の分子群である。これらすべておよび既報の分子(スチレン、スチルベン)に対して、CIXに関するつぎのような共通の性質を見出した。 1)CIXは分子内電荷移動状態とジラジカル状態のポテンシャル面の交差領域に当たる 2)その幾何学的構造は単に当該する捩れ座標をほぼ垂直に捩っただけではなく、他の内部座標のいくつかもS_0状態における安定構造の値から大きくずれている 3)そのずれは電子励起直後に起きる結合交替によるポリエン骨格の構造緩和に起因する 特に3)の知見は共役ポリエン類のみならず、π電子系一般に普遍的に起きる現象と考えられたため、三重結合を有する共役ポリイン類についてのS_n-S_1の内部転換におけるCIXについても検討した。具体的にはフェニルアセチレンおよびジフェニルアセチレンを対象とし、いずれの分子も結合交替によりベンゼン環の部分が芳香属性を消失したキノイド構造で特徴付けられる領域にCIXが存在することが分かった。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Y.Amatatsu: "Ab initio study on the photoisomerization from trans-4-dimethylamino, 4'-cyanostilbene"Chemical Physics Letters. 369. 673-679 (2003)
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[Publications] Y.Amatatsu: "Ab initio study on the substituent effect of the S_1/S_0 conical intersection of styrene derivatives"THEOCHEM. 624. 159-167 (2003)
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[Publications] Y.Amatatsu, Y.Ohara: "Ab initio design on new push-pull sila- and germastilbene"Chemical Physics Letters. 373. 245-250 (2003)
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[Publications] Y.Amatatsu, Y.Hasebe: "Ab initio study on phenylacetylene in S_1 and S_2"Journal of Physical Chemistry A. 107. 11169-11173 (2003)