2004 Fiscal Year Annual Research Report
スピン分極プローブ法による活性酸素種の化学反応動力学の研究
Project/Area Number |
15550005
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
河合 明雄 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (50262259)
|
Keywords | 一重項酸素 / 電子スピン分極 / 時間分解ESR / パルスESR / 励起状態 / ニトロキシドラジカル / 活性酸素 / アルブミン |
Research Abstract |
研究2年目も、活性酸素である一重項酸素の寿命を観測する新規な方法の開発に重点を置いた。ニトロキシドと一重項酸素の衝突ではニトロキシドに異常な電子スピン分極が発生する。これを時間分解ESR法でプローブする方法を各種ラジカルに対して検討し、最良のラジカルを選択する因子の評価を行った。また、開発中の新規寿命測定法をタンパク質のような生体分子の系に応用することを目指し、タンパク質表面での光励起種-ラジカル間の電子スピン分極の発生現象の観測やその効率的な測定法の開発を行った。以下、タンパク質表面の成果をまとめる。 電子スピン分極プローブ分子として、有機物研究で用いる有機溶媒および生体分子研究で用いる水の両方で利用可能なラジカルの選定を行い、コスト、溶解度、電子スピン分極強度などの因子を考慮した結果、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)が最良と結論した。これにより、様々な溶媒環境下での実験や結果の比較が可能になった。次に、電子スピン分極プローブによってタンパク質表面での活性酸素挙動の研究を行う初歩として、タンパク質中のトリプトファン残基の励起三重項と溶液中のTEMPOの衝突で発生する電子スピン分極の観測を試みた。タンパク質試料としては、折りたたみ動力学がよく知られるラクトアルブミンの水溶液を用いた。ESR感度が低い水溶液中での測定であるため、(1)パルスESR法の適用、(2)直径1.5mmの細いフローセルの設計、などを行い感度向上を図った。このような測定系を用い、紫外線レーザーでトリプトファン残基を励起したところ、TEMPOと三重項トリプトファンの衝突でTEMPOに電子スピン分極が発生することを見出した。またその強度は水溶液のpHに依存することがわかった。電子スピン分極強度のPH依存性を解析した結果、電子スピン分極強度とタンパク質折りたたみ構造に関連があるという興味深い結果を得た。タンパク質表面でも電子スピン分極発生が示されたので、今後はタンパク質中にニトロキシドをドープし、一重項酸素との衝突で生じる電子スピン分極を観測することを目指す。そのためにタンパク質中のSH基にニトロキシドを導入する方法を調査、考案中である。
|
Research Products
(4 results)