2003 Fiscal Year Annual Research Report
一重項酸素分子の電子常磁性共鳴法による直接検出と新しい定量法の開発
Project/Area Number |
15550009
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
八木 幹雄 横浜国立大学, 大学院・工学研究院, 教授 (00107369)
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Keywords | 一重項酸素 / 活性酸素種 / 電子常磁性共鳴 / 光増感反応 / エネルギー移動 / 励起状態 / 三重項状態 / オクタフオロナフタレン |
Research Abstract |
1.一重項酸素の効率的な生成方法の検討 一重酸素の発生方法としては,光増感反応を利用した。増感剤の選択は重要で,適切な増感剤を選択しないと電子常磁性共鳴(EPR)信号は全く得られないことが予備実験で判明していた。現在のところ最もS/N比が良好なスペクトルが得られる三重項増感剤はオクタフルオロナフタレンであるが,さらに効率よく一重項酸素を発生させるためには,より適切な増感剤を検索することが必要である。三重項増感剤の増感能力はその三重項状態のエネルギー準位と関係が深いと予測される。本補助金で購入した分光蛍光光度計の拡張機能を用いて,低温剛性溶媒中でのりん光スペクトル測定から三重項状態のエネルギー準位を求め,より適切な増感剤を検索するための指針として検討した。その結果,アントラキノンが有力な増感剤であることがわかった。 2.一重項酸素のEPRによる定量法の開発 光増感反応,マイクロ波放電,化学的方法のいずれの方法を用いて生成した一重項酸素においても,その濃度を定量することは一般に困難である。本研究においては基底三重項酸素のEPR信号が一重項酸素と同時に観測される点に着目し,全酸素分子の分圧から一重項酸素の分圧を求める方法を開発した。比較的低い圧力で三重項増感剤にオクタフルオロナフタレンを用いると,基底三重項酸素のEPR信号強度が光照射とともに減少し,同時に一重項酸素の信号が立ち上がることが確認された。このことは,全酸素分子の何パーセントが一重項酸素に変換されたかをEPRから精度良く見積ることが可能であることを示している。1kWの水銀-キセノン灯を励起光に用いた場合,全圧〜0.12Torrにおいて全酸素分子の約30%が一重項酸素に変換できることが分かった。これらのことは,定量的検出方法としては赤外発光検出法などの他の手法に比較してEPR法がより適切な方法であることを示している。
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Research Products
(1 results)