2003 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質結晶生成の迅速判定を目指した水溶液中における分子間相互作用の精密測定
Project/Area Number |
15550015
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
和泉 研二 山口大学, 教育学部, 助教授 (70260677)
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Keywords | インスリン / 結晶成長 / 光散乱 / タンパク質 / 会合 |
Research Abstract |
溶媒や沈澱剤の選択、pHの調整など、タンパク質の結晶を得るために調整しなければならない溶液パラメーターは多く、その組み合わせは複雑である。また、調整された溶液から結晶が生じるか否かの結論を得るためには、長時間待たなければならない。本研究では、調整したタンパク質溶液がタンパク質結晶の生成に適しているかを迅速に判定する手段として、短時間で測定可能な静的光散乱法による溶液中での溶質分子間相互作用の測定を試みている。本年度は、静的光散乱装置を作成するとともに、インスリン結晶生成に対する溶液pHおよび亜鉛濃度依存性を調査した後、実際に幾つかのインスリン溶液について静的光散乱測定を試みた。その結果、1)液々相分離による液滴の形成や樹枝状結晶の形成などの新しい現象を見い出すとともに、これまで必ずしも明確でなかったインスリン結晶のpHおよび亜鉛イオン濃度依存性の結晶形態図を作成することができた。2)粒子間相互作用が引力的か斥力的かの目安として静的光散乱の解析から得られる第2ビリアル係数(正は斥力的、負は引力的)は、結晶化するしないに拘わらず、いずれの溶液でも大きな負として観測されることがわかった。つまり、結晶化とは別に溶液中で会合体形成が進行するタンパク質では、第2ビリアル係数の正(斥力)負(引力)を、結晶が生成するか否かの判断基準として単純に用いることはできないことが判明した。 会合体を形成するタンパク質は数多く、それらのタンパク質に対する迅速な結晶化判定法はやはり必要である。そこでH16年度は、まず、静的光散乱および動的光散乱によって会合体形成の平衡定数を決定し、インスリンの会合体分布からインスリンの結晶化の判定が可能かどうかを検討する。
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