2004 Fiscal Year Annual Research Report
生理活性分子の励起状態ダイナミックス:ピコ秒・ナノ秒時間分解振動分光法による研究
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15550018
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
高橋 博彰 早稲田大学, 理工学術院(理工学部), 教授 (40063622)
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Keywords | 生理活性分子 / 励起状態ダイナミックス / 時間分解振動分光 |
Research Abstract |
平成16年度には以下の研究成果を得た。 (1)補酵素ピリドキサール-5-リン酸シッフ塩基のモデル化合物メチルアミン誘導体について、ab initio DFT(B3LYP/6-31+G*)法を用いて、最適化構造を求め、基準振動の計算を行い、力の定数を求めた。最適化構造はリン酸基がスキュウ形のエノル構造であり、赤外吸収およびラマンスペクトルと振動数および強度ともに良い一致を示した。また、ケト構造とエノル構造とのエネルギー差は2.6kcal/molであり、両構造は溶液中で平衡状態にあると考えられる。紫外光照射により生成する短寿命の過渡分子種はC=N結合に関してのsyn形である可能性が高い。 (2)皮膚病の光治療薬である8-メトキシソラーレン(8-MOP)は、15年度の研究により、同属化合物のソラーレン(Ps)や5-メトキシソラーレン(5-MOP)とは光化学反応が全く異なることが分かっている。ピコ秒時間分解吸収スペクトルの測定により、8-MOPの最低励起一重項状態S_1と最低励起三重項状態T_1はPsや5-MOPのそれらと吸収の位置および寿命が全く異なり、特に8-MOPのT_1の寿命が極めて短いことが分かった。ab initio DFT(B3LYP/D95V)法を用いたMolecular Dynamics Simulation(AIMD)計算を行い、8-MOPではPsや5-MOPとは異なりT_1状態において開環構造をとることが示された。8-MOPの生理作用がPsや5-MOPのそれと異なるのは、T_1状態における開環構造により説明されることが分かった。 (3)補酵素還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)の光化学反応を、時間分解共鳴ラマンおよびUV吸収分光法により研究し、370nm,560nmに吸収ピークをもち、1627cm^<-1>にラマンバンドを示すカチオンラジカルが観測され、これが時間とともに390nmに吸収を持つ中性ラジカルに変換することを明らかにした。490nmに吸収ピークをもつもう1種の過渡種の正体は未だ不明である。
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Research Products
(2 results)