2003 Fiscal Year Annual Research Report
トリチオール環を有するフタロシアニンの合成およびその物性に関する研究
Project/Area Number |
15550024
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
木村 毅 岩手大学, 工学部, 助教授 (70241784)
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Keywords | フタロシアニン / トリチオール環 |
Research Abstract |
フタロシアニンは,染料・顔料として利用される他,センサー,触媒,光ディスク,光学治療薬として応用されている機能性色素である。この化合物の機能化のためには,Q帯吸収の長波長シフトが重要であることが知られており,これまで多くの研究者により共役系の拡張,歪みやヘテロ原子の導入などが検討されてきた。 一方,最近我々は,ジアルキルテトラブロモベンゼンと単体硫黄をDBU中で反応させることにより,ジブロモベンゾトリチオールが得られることを発見した。この化合物は2つの臭素置換基を有しているので,臭素をニトリル基に変換できれば,この化合物からのフタロシアニンの合成が可能になる。 本研究では,ジブロモベンゾトリチオールを出発物質として用い,4段階の反応でキシリレンジチオ基を有するフタロシアニン誘導体を得ることができた。また,相当するフラロシアニン金属錯体を合成するために,得られたフタロシアニンの金属化を試みた。実験は相当する金属塩をDMF中で反応させることによって行い,目的とする金属体を得た。以上のようにして,フタロシアニン誘導体およびその金属体を得ることができたので,一連の化合物の紫外可視吸収スペクトルの測定を行った。その結果,これらの化合物のQ帯吸収は,無置換フタロシアニン(680nm付近)に比較して大きく長波長シフトしていることが明らかとなった。 一方,得られたフタロシアニン誘導体の酸化還元挙動を明らかにするため,酸化還元電位を測定した。これらの化合物のサイクリックボルタモグラムは,4段階の酸化還元対(酸化側2段階,還元側2段階)を示した。これらはフタロシアニンの酸化還元に由来しており,それぞれ0価,-1価,-3価,-4価に相当することが明らかとなった。また,金属体では中心金属の酸化還元に由来するピークが観測された。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] T.Kimura, T.Sasaki, H.Yamaki, E.Suzuki, S.Niizuma: "Radical Cation and Dication Derived from 4,8-Diethylbenzo[1,2-d:4,5-d']-bis[1,2,3]trithiole [DEBBT]:Change of Electronic State from Singlet-State Dication DEBBT(2+)-S to Triplet-State Dimer 2DEBBT(2+)-T in D_2SO_4 and CD_3CN Solutions"European Journal of Organic Chemistry. No 24. 4902-4908 (2003)