2003 Fiscal Year Annual Research Report
安定なトリアリールホスフィンカチオンラジカルの合成、単離、及び機能性分子への展開
Project/Area Number |
15550025
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐々木 茂 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (90254143)
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Keywords | トリアリールホスフィン / カチオンラジカル / X線結晶構造解析 / 単結晶 / 結合角 / EPR / 超微細結合定数 / 不斉中心 |
Research Abstract |
トリス(2,4,6-トリシクロヘキシルフェニル)ホスフィン(1)をテトラヒドロフラン中、テトラフルオロホウ酸ニトロソニウムで酸化し、得られたカチオンラジカルを再結晶することにより1のカチオンラジカルのテトラフルオロホウ酸塩を紫色結晶として単離することに成功した。X線結晶構造解析の結果からホスフィン1ではリン原子周辺の平均の結合角が111度程度であるのに対し、対応するカチオンラジカルではほぼ120度でありリン原子が平面構造をとることがわかった。X線結晶構造解析を行ったカチオンラジカルの単結晶のEPスペクトルは、結晶中で平面構造のラジカル分子が平行に配列していることに対応し、角度依存性のある一組の2本線のシグナルとして観測され、さらに角度依存性の解析から^<31>P核による異方性超微細結合定数を明らかにした。この値はポリマー、剛体溶媒等のマトリックス中に単離したカチオンラジカルのものとほぼ等しく、1のカチオンラジカルはマトリックス中でも平面構造をとっていることが示唆された。本研究はトリアリールホスフィンカチオンラジカルの初めての単離例であるとともに、トリチルラジカルやトリアリールアミニウムラジカル等良く知られた安定ラジカルに対応する高周期元素ラジカルの初めての単離例でもあり意義深い。さらに、不斉中心を有する立体混雑したトリアリールホスフィンへの展開を目的として、3つの異なる嵩高い置換基を有する(2,4,6-トリシクロヘキシルフェニル)(2,4,6-トリシクロペンチルフェニル)(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)ホスフィン及び軸不斉置換基を有する[4-メチル-anti-2,6-ジ(1-ナフチ)フェニル]ビス(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)ホスフィンを合成し、ラセミ体として得、X線結晶構解析により構造を明らかにした。
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