2004 Fiscal Year Annual Research Report
有機溶媒を考慮した反応メカニズム:速度論的実験と新規QM/MM法の開発
Project/Area Number |
15550034
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
山高 博 立教大学, 理学部, 教授 (60029907)
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Keywords | QM / MM法 / 有機反応経路 / 遷移状 / 溶媒効果 / 分子軌道法 / 分子動力学法 / ニトロアルカン異常性 / グリニャール反応 |
Research Abstract |
本研究計画では、QM/MM法やFragment MO(FMO)法などの新しい理論計算法を用いて有機反応を解析し、ストップトフロー法による速度論実験の成果をあわせ、理論計算法の有効性を示すと同時に有機反応論の新規な概念を創出することを目的とした。 QM/MM法による反応解析としては、S_N1反応やS_N2反応として良く知られている一連の脂肪族ハロゲン化アルキルの水中での求核置換反応を取り上げ、反応経路や遷移状態に及ぼす溶媒の効果についてQM/MM法を用いて詳しく検討した。その成果は、国内外のシンポジウム等で発表した。現在、QM/MM法に加えてFMO法による溶液中の有機反応の解析を行っている。また、ニトロアルカン異常性の原因を解明するため、気相、分子クラスターならびに水溶液中でのニトロメタン、ニトロエタン、およびアリールニトロメタン類の酸-塩基平衡の活性化エネルギーと平衡エネルギーを、理論計算により求めた。その結果、ニトロメタンとニトロエタン間の異常性は溶媒を考慮することによってはじめて再現できた。しかしながら、アリールニトロメタン類の示す異常性は水溶液中の理論計算によっても再現できなかった。この問題については、さらにQM/MM法あるいはFMO法を用いて検討する予定である。速度論による研究対象としては、RLiやRMgXのカルボニル官能基への求核付加反応、ケト-エノール互変異性の化学、転位反応や異性化反応など基本的で重要な有機反応を取り上げた。RLiおよびRMgXの反応については、ベンゾフェノンやベンズアルデヒドとの反応の速度をストップトフロー法で測定することによって、これらの試剤の会合状態、遷移状態構造を求め、その反応機構を解明した。これらの他、ニトロアルカン異常性を検証するための速度論的実験も行った。
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