2003 Fiscal Year Annual Research Report
外圏型ポリ酸イオン-遷移金属複合体の構造と物性測定
Project/Area Number |
15550047
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
尾関 智二 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (60214136)
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Keywords | ポリオキソメタレート / 巨大球状分子 / シンクロトロン放射光 / ポリモリブデン酸 |
Research Abstract |
外圏型ポリ酸イオン-遷移金属複合体の新規開拓を目指す過程で、混合原子価のポリオキソモリブデン酸イオンの合成を試みたところ、遷移金属イオンとの外圏型複合体は得られなかったものの、新たな結晶性の化合物が得られた。その単結晶について、シンクロトロン放射光を利用してX線回折実験をおこなったところ、[Mo^<VI>_<72>Mo^V_<60>O_<372>(CH_3COO)_<42>(H_2O)_<32>]^<54->という新規巨大球状クラスターイオンが含まれることが明らかとなった。なお、このX線回折実験に用いた装置は、このような巨大無機分子や、微小結晶の構造解析のために今年度研究代表者らによって高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所放射光研究施設に設置されたものであるが、今回の解析により、その性能が実証された。 このイオンは、既にMullerらによって報告されている[Mo^<VI>_<72>Mo^V_<60>O_<372>(CH_3COO)_<30>(H_2O)_<72>]^<54->と類似の構造を持つが、Mullerらの分子の対称性が正二十面体対群(Ih)であるのに対し、今回新たに合成された分子は内部に酢酸イオンがより多く取り込まれたために、対称性が正四面体群(Th)に低下している。さらに、Mullerらの分子では球状分子の内側は30個の酢酸イオンのメチル基とモリブデン原子に配位した水が混在する環境にあるが、今回見出された分子の内側は42個の酢酸イオンのメチル基にて埋め尽くされており、ナノメートルサイズの球状の疎水的環境が実現されていることが明らかとなった。そのことから、疎水分子の取り込みなどの機能が期待されるため、現在、Drug Delivery Systemなどへの応用を視野に入れ、さまざまな疎水分子の取り込みについて検討を加えている。
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[Publications] A.Yamamoto, H.Takakura, T.Ozeki, A-P.Tsai, Y.Ohashi: "Structure refinement of i-Al-Pd-Re quasicrystals by synchrotron radiation data"Journal of Non-Crystalline Solids. 334&335. 151-155 (2004)