2003 Fiscal Year Annual Research Report
ICP質量分析法における有害物質の大気中への放出に関する評価とゼロエミッション化
Project/Area Number |
15550068
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Research Institution | Fukui University of Technology |
Principal Investigator |
田中 智一 福井工業大学, 工学部, 助教授 (40236609)
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Keywords | ICP-MS / 減圧ヘリウムICP / ゼロエミッション / 超音波ネブライザー / 連続試料導入 / ラングミュアプローブ / 電子温度 / イオン化率 |
Research Abstract |
ICP質量分析法(ICP-MS)において,今後ゼロエミッション化を達成するために必要となる減圧ヘリウムICPに関し,以下の研究を行った。 1.プラズマへの連続試料導入法の開発 減圧ヘリウムICPは,これまでプラズマに溶液試料を連続的に導入することが難しく,元素の導入から装置外への排出に至る過程を安定に評価することが困難であった。このため,市販の超音波吸入器(カシオ製NE-U22)を利用してネブライザーを試作し,減圧ヘリウムICP-MSへの連続的な試料導入を試みた。超音波吸入器から取り外した振動子部分をガラス製チェンバー(内容積約300ml)内に設置し,ペリスタポンプによって試料を振動子に送液した。生成した試料エアロゾルは,ヘリウムでヒーター及びコールドトラップに搬送して水分を除いた後,プラズマに導入した。この試料導入システムと減圧ヘリウムICPとの間にキャピラリーを挿入することで,大気圧下でのネブライザーの操作が可能になった。また,プラズマの安定性を損なうことなく,30分以上に渡って連続的な溶液試料の導入が可能になった。 2.ラングミュアプローブを用いたプラズマの特性評価 減圧ヘリウムICPの特性を調べるため,ラングミュアプローブによるプラズマ診断を行い,減圧及び大気圧アルゴンICPと比較した。その結果,減圧ヘリウムICPの電子温度は2.5〜3.2eVであり,減圧及び大気圧のアルゴンICPの値(それぞれ1.0〜1.5及び0.5〜0.8eV)よりもかなり高くなった。一方,電子密度は通常のアルゴンICPに比べ約1桁低下した。減圧ヘリウムICPが高い電子温度を有することから,イオン化しにくい元素でもイオン化率の向上が示唆され,プラズマの特性に関しても特長が見出された。 上記の研究成果を基に,減圧ヘリウムICPを利用したICP-MSのゼロエミッション化について現在検討中である。
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