2005 Fiscal Year Annual Research Report
金属上に不斉点を有する新規金属錯体を利用した不斉炭素-水素結合活性化反応の開発
Project/Area Number |
15550091
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
片岡 靖隆 奈良女子大学, 理学部, 教授 (90221879)
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Keywords | Cp'-P配位子 / ロジウム / イリジウム / π-アリル錯体 / 珪素-水素結合活性化 / ヒドリドシリル錯体 / 金属上の不斉点 |
Research Abstract |
本研究の目的は、Cp'-P配位子を利用した金属上に不斉点を有する遷移金属錯体を用いた不斉触媒反応の開発であり、ターゲットとする反応は、不斉合成を絡めた任意の炭素-水素結合の切断およびその官能基化である。平成17年度は、金属上に不斉点を有するイリジウムπ-アリル錯体の合成、および、炭素-水素結合活性化反応のみならず珪素-水素結合活性化反応への展開をテーマに研究を遂行し、以下に示す成果が得られた。 1.光学活性基としてネオイソメンチル基を有するCp'-P配位子のリチウム塩とイリジウム塩素架橋シクロオクテン1価錯体を反応させ、Cp'-P配位子を有するイリジウムシクロオクテン錯体の合成を行った。これまで中心金属としてロジウムを用いた場合、この段階で発生する面不斉の選択性はあまり高いものではなかったが、イリジウム錯体の場合は、92%deで一方のジアステレオマーが選択的に得られることがわかった。次に、このイリジウムシクロオクテン錯体と臭化アリルを反応させると、exo型のカチオン性π-アリル錯体が得られた。臭化クロチルを用いると、中心金属上に不斉点を有する同様のexo型のカチオン性π-アリル錯体が92%deで得られた。再結晶法により光学的に純粋な錯体の単離を試みたが、現在のところ成功には至っていない。 2.炭素-水素結合活性化反応への展開への前段階として、Cp'-P配位子を有するイリジウムシクロオクテン錯体の珪素-水素結合活性化反応を検討した。その結果、Ph_3SiHやEt_3SiHの珪素-水素結合が室温数時間という温和な条件で活性化され、金属上に不斉点を有するイリジウムヒドリドシリル錯体が高選択的に得られた。この反応における金属上に発生する不斉点の選択性は、従来とは異なりCp'-P配位子のシクロペンタジエニル基に置換基を導入すると低下することがわかった。現在、この錯体の不斉反応への展開、ならびに、炭素-水素結合活性化反応への応用を検討している。
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