2004 Fiscal Year Annual Research Report
α,ω-ジイン類のカチオン性パラジウム触媒による環化-ヒドロシリル化の研究
Project/Area Number |
15550098
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Research Institution | Tokyo University of Science, Yamaguchi |
Principal Investigator |
山本 經二 山口東京理科大学, 基礎工学部, 教授 (80025999)
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Keywords | アルキン / ヒドロシリル化 / 二量化 / α,ω-アルカジイン / カチオン性Pd錯体 / α,ω-アルケンイン / hydroalladation / carboalladation |
Research Abstract |
本課題で行ってきた研究成果を、以下の2段階に分けて要約する。 1)1-アルキンとHSiCl_3による二量化-ヒドロシリル化の発見に端を発して、α,ω-アルカンジインの分子内の二量化-ヒドロシリル化、すなわち環化-ヒドロシリル化に特異的に触媒活性を示すカチオン性のパラジウム錯体を案出した。これによって、各種α,ω-アルカジイン誘導体について5,6員環(場合によっては7員環も)を形成する一般性のある環化反応を見出すことができた。この触媒反応機構を明らかにする目的で、非対称な1,6-オクタジインを用いた反応では、末端アルキン部位からhydropalladationが起こり、分子内の内部アルキン部位にcarbopalladationを起こして5員環を形成し、ついで、ビニル炭素-パラジウム結合がSiCl_3基で置換されて生成物にいたり、一方、カチオン性のH-Pd種を再生するという触媒サイクルを提案した。この反応では、元来の二量化-ヒドロシリル化と異なり、HSiMe_nCl_<(3-n)>(n=0-2)の付加成分が使用できることが特徴の一つであることも分かった。 2)有機合成の見地から、9-Oxa-1-dodecen-6,11-diyneを基質に選び、HSiCl_3による触媒的環化-ヒドロシリル化を検討した際に、ジイン部分での環化(25%)よりもエンイン部分での環化-ヒドロシリル化(75%)が優勢に進行するという予期せぬ結果を見出した。これをさらに、α,ω-アルケンイン誘導体を基質とし、同様の反応条件で試みた結果、非常に短い反応時間で、かつ、高い収率で後者に対応する環化-ヒドロシリル化生成物を得ることを見出した。この事実は、上述の触媒サイクルにおけるhydropalladationの段階が可逆的に起こること、また、アルケン部位でのcarbopalladationの速度が、対応するアルキン部位でのそれより速やかに進行していることを示唆している。 以上の研究成果によって、われわれは、ニッケル、白金、あるいはロジウム錯体を触媒とし、HSiR_3(トリアルキルシラン)を付加成分とするα,ω-アルカジインの環化-ヒドロシリル化の既往の研究では全く見られない、極めて新規性に富んだ知見を得ることができた。これを前例を見ない分子間の交差カップリング反応に展開する予定である。
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