Research Abstract |
本年度は,キラル高分子結晶が示す旋光性や圧電性の結晶光学的評価とそれに基づく開発指針を得る実験に必要な純粋なキラル高分子試料,薄膜作成装置,構造観察装置,ずり圧電評価装置の開発を進めた.以下に概要を示す. I)キラル高分子試料の準備 対象とする高分子をL型ポリ乳酸(PLLA)に絞り準備を進めた.光学異性体(D体)の量を0.001%-1%,分子量を7000〜50万と,大きく変化させたPLLAを12種類準備した.このPLLAを用い,以下の評価試料を作成することにした. II)キラル高分子結晶が秘める機能性を引き出す構造制御法の追究 短時間で巨大な力を与えることで,PLLA膜の構造制御を試みた.具体的には,コンプレッサでは不可能なパルス型高圧力波を作る装置を,非線形技術を応用し,試作した.その結果,立ち上がり0.1秒,待機0.4秒,100MPaの圧力波を試料に加えることができるようになった.残念ながら,当初の目標であった,立ち上がり0.01秒,待機1.0秒,550MPaの圧力波は,計算上可能であるにも関わらず,実現していない.これは,現在コンプレッサから金型部までの長さが約70cmと長いため,圧力ロスが発生していることが原因とわかった.現在これを50cm以内にする改造中である. III)ずり型逆圧電性評価装置の確立とその圧電性の評価 ずり型逆圧電性により駆動した試料の様子を,顕微鏡下で,CCD動画取り込み,評価装置を開発した.高空間分解能化,高速取り込み化のために,試料に印加する周期と同期をとれるように,新たに回路を設計した.これにより大きな変位を起こしたfiberのスナップショットを間違いなくとりこめるようになった. D体量を0.01%,分子量30万のPLLAを高速紡糸により,fiberとした.得られたfiber径150μmのPLLAを用いて,最大変位量300μmを実現することができた.そしてこれをもとにbiologicalなtweezerを実現できる可能性を見出した.この研究成果は強誘電体の国際会議(Cambridge, UK)で発表したが,多くの反響を得た. IV)ナノスケールでの結晶光学的評価 最近開発が進んでいる「近接場光学」の測定法を取りいれる第一歩として,高分子膜用の近接場光学顕微鏡の仮設装置を試作した.分解能はまだ十分とは言えないが,PLLAとポリメチルメタアクリレートのブレンド膜をこれで観察した.その結果,通常の偏光顕微鏡では確認しえない大きさのブレンド構造を観測できる可能性を見出した. 若干予定より遅れているものも見られるが,概ね当初の目標どおりのものが得られている.H16年度はこれらをもとに強力に実験を推し進める予定である.
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