2003 Fiscal Year Annual Research Report
長鎖アルキル尿素誘導体の準プラスティック相の結晶設計と特異物性
Project/Area Number |
15550119
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
橋本 眞佐男 神戸大学, 理学部, 助教授 (90030775)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
枝 和男 神戸大学, 理学部, 助手 (00193996)
山村 公明 神戸大学, 理学部, 教授 (60031358)
|
Keywords | 相転移 / 秩序無秩序転移 / 結晶構造 / 尿素誘導体 / 熱分析 / rotator Phase / 準柔粘性結晶 / プロトンジャンプ |
Research Abstract |
N-アルキル尿素(H_2NCONHR、R=炭素数nのアルキル基、C_n-Uと略記)の熱分析と結晶構造解析を系統的に行い以下の成果を得た。 1 C_<3-5,8,10,12-15,17-19>-Uに相転移が見られ、C_<4,8,15,19>-Uの転移エントロピー(ΔS_t)は融解のエントロピーの1/3-1/2に達する(rotator phase類似現象)。 2 C_<2,4-14>-Uの17の結晶相(C_4-Uの低温相を除く)は同族同形(単斜晶系、空間群P2_1/c)を示す。これらの結晶中には共通した水素結合ネットワークに基づく類似超分子が存在し、そこではアルキル基は交差配列する。各結晶は超分子のbc面平行積層により構成され、結晶構造の相互の差は超分子のc軸方向の相対位置による。C_4-Uの低温相にはこれらとは全く異なる超分子が存在し、分子は平行配列する。 3 C_<10,12-14>-Uの相転移は空間群変化を伴わず、超分子のc軸方向への「ずれ」によって起こる。C_<8,12>-Uの転移では空間群が変化し(P2_1/c-C2/c)、超分子がb,c両軸方向へ「ずれ」る。C_n-Uの転移は超分子の結晶軸方向への「ずれ」をその一般的特徴とする。 4 C_8-Uの高温相ではメチル基がトランス、スキュー位置に無秩序配列し、また他の炭素原子の熱振動振幅も異常に大きい。転移は秩序無秩序型でありΔS_tは無秩序構造と大振幅格子振動に帰せられる。 5 C_4-Uの室温相-中間相転移では、一部の分子が平行配列から交叉配列に移行する。また中間相にはブチル基の無秩序配列など大きな構造の乱れが存在する。この転移は秩序無秩序型であり、一種の界面溶融現象である。ΔS_tの大部分は無秩序構造に帰せられる。 6 本研究計画の予想通り、N-アルキル尿素が準柔粘性結晶になり得ること、またC_<4,8>-Uの転移点を混晶形成により制御できること、さらにプロトンジャンプによる電気伝導の可能性(C_4-U)などが明らかになった。C_n-U以外の尿素およびチオ誘導体についても興味ある知見を得た。
|