Research Abstract |
炭素繊維やスチールワイヤーなどの導電性繊維で強化された複合材料(CFRP,タイヤなど)において,成形時の硬化度や成形不良,使用時のひずみや負荷履歴,点検時の破壊・損傷などのモニタリングは,成形コスト削減,使用時の健全性保証,点検コスト・時間の削減に直結するため重要な技術である.申請者らは電気抵抗変化を利用した手法を提案してきた.これらの構造に対して同一センサーで成形時から使用時のひずみ,損傷などのすべてをモニタリング可能であり,この履歴を構造の履歴書として統一的に管理可能とするシステムが望まれている.本研究では導電性複合材料の成形から,使用時のひずみ,破損時の損傷までを同一の仕組みで統合されたシステムによってモニタリングする統合モニタリングシステムを新規に開発し,その履歴をソフト的にオブジェクト化して統一管理することでモニタリングを高度化することを提案する.ハードとソフト面の統合化で,成形時からの情報をそのまま製品に保有した新しい製品履歴をソフトウエア的に作成可能となり,画期的な高度モニタリングシステムとなる. 平成16年度では,ひずみモニタリング,損傷モニタリングの技術を洗練させることが主目的になる.また,CFRPの無線損傷モニタリングについても基礎的検討を行う.1.ひずみモニタリング負荷に伴う電気インピーダンス変化の基礎特性として,0°単層板,90°単層板の引張,繊維直角方位,せん断負荷時の繊維方位,繊維直角方位の電気インピーダンス変化をLCRメータを用いて測定する,前年度はCFRP積層板について実施したが,積層の影響の区別が困難であったため,本年度は単層と積層を比較検討する.さらに,積層板についても同様の特性測定試験を実施する.これらの結果から,ゲージ率の正負のばらつきについて考察する.2.損傷モニタリング 損傷モニタリングにおいてはCFRPの厚板の擬似等方性積層板を作成し,マトリックス割れ時の電気インピーダンス変化を実測し,マトリックス割れの検出可能性について板厚さの影響を実験的および解析的に検討する.マトリックス割れの位置同定についても応答曲面法を用いてFEM解析で討する.3.無線損傷モニタリング CR発信回路を用いた無線方式でのCFRP損傷モニタリングについて基礎的な回路接続実験を実施してその有効性を確認する.この結果,ゲージ率は本来は正であり,負となるのは電極の接触不良がある場合に限定されること,マトリックス割れも電気抵抗変化から測定可能であること,無線モニタリングも技術的にはCR発振回路を用いることで可能となることが明らかになった.
|