2003 Fiscal Year Annual Research Report
くさび形状付き油溝を設けたクロスヘッドピン軸受の負荷能力に関する研究
Project/Area Number |
15560119
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
北原 辰巳 九州大学, 大学院・工学研究院, 助教授 (50234266)
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Keywords | 内燃機関 / クロスヘッドピン軸受 / トライボロジー / 潤滑 / 流体潤滑 |
Research Abstract |
大形2サイクルディーゼル機関のクロスヘッドピン軸受は常に下向きの高い荷重を受けながら低速で揺動運動を行うため,軸受面に形成される油膜が極めて薄く焼損や破損を起こしやすい軸受である.近年は大形機関の高出力化やコンパクト化が進み,クロスヘッドピン軸受の潤滑状態は一段と苛酷化する傾向にあり負荷能力の向上が重要な課題となっている.本研究では実際機関のクロスヘッドピン軸受と相似な変動荷重,揺動滑りの条件で負荷限界試験を実施でき,さらに軸受面の油膜形成状態を測定できるようにした軸受試験機を用い,くさび形状付き油溝を設けたクロスヘッドピン軸受の負荷能力について検討した.その結果,従来型油溝をもつクロスヘッドピン軸受の場合,軸受すき間比を小さくすると軸受全面で大きなスクイズ作用が得られるため負荷能力の向上に有利であるが,軸受すき間比を過小にするとくさび作用が弱まり油膜厚さが減少するため負荷能力は逆に低下するという欠点があることがわかった.しかし軸受すき間比が小さい軸受でも油溝両側にくさび形状を設けることにより,油膜厚さが増大し負荷能力の大幅な向上が期待できることがわかった.くさび形状付き油溝のくさび諸元が油膜特性,並びに負荷能力に及ぼす影響を調べた結果,くさび角が大きい場合には,大きなくさび作用が得られずに油膜特性が改善されず負荷能力の大幅な向上は期待できないが,くさび角を0.1°程度まで減少させると油膜厚さが増大し負荷能力が向上することがわかった.一方,くさび幅角の増加はくさび作用の増大に有利であるが,くさび幅角を過大にするとスクイズ作用に有効な軸受面積が減少するため,負荷能力は逆に低下する傾向が認められた.以上の結果から,くさび幅角5°およびくさび角0.1°のくさび形状の場合に負荷能力が最大となることがわかった.
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