Research Abstract |
前年度末に試行的に行った超音速弱電離高温窒素プラズマ気流による鋼材の硬化試験によれば,ビッカース綱度で200程度のものが約3倍にまで硬化する感触が得られた。ここで,通常の窒化硬化は密閉容器の中に対象となる硬化用部材を設置し,低温の窒素プラズマにより数時間にわたる長時間をかけて行われる.このため,部材全面にわたって硬化表面を形成することができるものの,部分的に必要となる箇所の硬化や,さらに部材の位置による空間的な硬度変化を持つような,いわゆる傾斜機能性材料の製作はできない.さらに硬化に長時間を要するなどの欠点がある.そこで,数分程度で硬化が可能かどうか,またポイント的な硬化の可能性や,傾斜機能性材料開発へのフィジビリティスタディという位置づけで,高温かつ高速窒素プラズマ気流の試験条件をパラメータとして,窒素プラズマ硬化への影響を詳細に調べた。試験部材は直径30mmのディスク状円盤で,ながれに対し円盤中央部が澱み点となるような配置で設置した.また窒素気流への投入電力は150V×50Aである.パラメータは気流速度をマッハ数5および6,プラズマ気流の質量流量を0.472および0.236g/s,窒化時間を10s×10回,5s×20回および15s×10回とした.その結果,ビッカース硬度230の窒化鋼(SACM645)が最大で630にまで達した.また空間的に硬度が滑らかに変化する傾斜機能性材料の特徴も確かめられた.一方,本研究のプラズマ気流は高温であるため,材料の焼きなまし的現象も見られ,温度もまた重要なパラメータであることが分かった. 次に,対象となるプラズマ気流の実験解析として分光による流れの特性を調査し,回転温度や振動温度,さらに電子励起温度の測定を行った.今年度は窒素気流中に酸素を混入し,中性のNIおよびOI原子による電子励起温度をボルツマンプロットにより調査した.その結果,球頭円柱物体の前方0.2mmにおけるNIが17500K,OIが18500Kとなり,高励起順位による放射光から得られる電子励起温度は自由電子の並進温度に等しく,自由電子温度が化学種に依存しないとすると,この自由電子温度は18000±500Kと推定される. そこでこの分光解析結果を受け,当該年度はさらに詳細なプラズマ気流の特性を知る必要性を感じ,数値解析プログラムの開発を始めた.第1ステップとしてのベースプログラム開発が終わり,N_2,O_2,N,O,NO,NO^+,e^-による化学反応を流れとは独立行うプログラムを併用してプラズマ気流の数値シミュレーションを行った.解離による吸熱作用のため,ショックレイヤー内の温度は大幅に低下し,完全気体を仮定すると6300Kの気流温度が実在気体効果で3500K弱にまで低下することが示された.
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