Research Abstract |
固体高分子燃料電池(PEFC)として,改質器を用いない直接発電型PEFCを対象とし,燃料として無害な液体のエタノールに着目した.この燃料の場合,発電出力が小さいので,出力向上のための研究を行った.独自の膜電極接合体(MEA)の製法であるCast法で製作したMEAを用いてPEFCを自作し,エタノール水溶液を直接供給して発電性能を測定した結果,このMEA製法は,他の製法の場合より,2倍程度,発電出力を向上できた. エタノール直接発電型PEFCのアノード側流路での溶液を液体クロマトグラフで分析した結果,副生成物として酢酸とアセトアルデヒドが検出された.それらの挙動を把握するため,独自のGTT法に基づいてPEFCの三次元数値解析モデルを構築し,流動解析を行うと共に,透明アクリル製流路で,可視化とPIVによる流動計測を行った.その結果,屈曲流路が副生成物の排出に有効であることが判った.アノード側流路で発生したガスの成分をガスクロマトグラフで分析した結果,COは検出されなかったが,CO_2は大気中の約20倍の濃度で検出された.その結果より,エタノールはアセトアルデヒドや酢酸まで酸化され,一部はCO_2まで酸化されるが,その過程でCOは生成されないことが示された.一方,水素を燃料とするPEFCの小型・軽量化に向けて,独自の円筒型PEFCを考案し,比出力130mW/gを得ることに成功した. システム化について,PEFC単体では,負荷変動の大きい電動軽車両の電源として不十分なため,水素を燃料とした自立型PEFCと電気二重層キャパシタを用いた電動軽車両用ハイブリッドシステムを構築し,走行状況に応じてモータへの電力供給比率を容易に制御できる時分割方式を考案した.PEFCは電気要素(電源,キャパシタ,抵抗)でモデル化できるが,等価回路はキャパシタ成分と反応抵抗成分が並列接続状態となるため,時分割方式でパワー制御することによって,PEFCの内部損失を低減することができる.高周波でスイッチングするほど,その効果も大きく,時分割周波数が10kHzの場合,時分割無しの場合に比べ,PEFCの効率が5%向上した.
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