Research Abstract |
近年,介護問題や高齢者の生活の質に関する問題が提起されており,本研究では,制御技術,情報処理技術を適切に導入し,自律的な支援を行い使用する人の生活の質の向上を実現する福祉機器の実現を目指して,適応学習制御を導入した可動式首サポータの開発を行った.とくに,高齢化や,筋萎縮性側索硬化症(ALS)をはじめとする重度の障害により全身の筋力が低下し,自律的に首を保持できない状態の人を対象として,首を保持しながら,使用者の意思に応じて首の運動が可能な姿勢保持支援システムの開発を行った.開発した具体的なシステムは,空気アクチュエータを実装した装具と,アクチュエータの駆動源である空気圧を供給するエアコンプレッサ,電磁弁,制御アルゴリズムを実装したマイクロコンピュータ等を内蔵した制御装置から構成される.首サポータは,全身の筋力が麻痺する障害をもつ人の動作を支援するものであるが,使用する人によって障害の程度は異なり,また同じ人であっても,障害の状態は常に変化する.そのため,適切な支援動作を実現するためには,使用する人の状態に常に適応することが必要となる.また首サポータを装着する首は,脊髄をはじめとして生命維持に必要な機能の集まった非常にデリケートな部位であり,十分な安全を確保するために高い信頼性が求められる.そこで,本研究ではシステムの制御として,位置制御ベース型のインピーダンス制御を用いる.昨年度は,信頼性の高いPID制御をベースに,その制御パラメータをニューラルネットワークの一種である小脳演算モデル(CMAC)を用いて調整する適応学習型のCMAC-PID制御系を首サポータに適用した.本年度は,より柔軟な空気膜構造体を用いたセンサーアクチュエータ系を提案し,それを用いた試作2号機を製作し,センサーアクチュエータ系の基本特性を検証し,CMAC-PIDコントローラを用いた位置ベース型インピーダンス制御を実装し検証した.
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