2006 Fiscal Year Annual Research Report
所有と利用からみた伝統的な街路・水路空間とその現代的意味
Project/Area Number |
15560530
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
黒野 弘靖 新潟大学, 自然科学系, 助教授 (80221951)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊地 成朋 九州大学, 大学院人間環境学研究院, 教授 (60195203)
伊藤 裕久 東京理科大学, 工学部, 教授 (20183006)
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Keywords | 所有 / 利用 / 雁木 / 水路 / 共用 |
Research Abstract |
平成18年度は、街路を共用空間とする町並みとして、引き続き上越市高田の雁木通りを対象とした。雁木通りの多く残る仲町通2丁目から6丁目の600軒の外観調査と117軒の実測調査を追加した。これまでの断面図データと併せて、近代における町家と雁木の展開過程を検証した。(担当:黒野)。 この結果として、1.明治初期には造り込み町家が多く、2階はウラニカイだけで、チャノマの階段から上がること、2.明治後期には落とし町家がつくられる。オモテニカイが居室化し、渡廊下が設けられることにより、棟高が上がること、3.昭和初期にはオモテニカイとウラニカイが同じ天井高となり、1階のミセも同じ天井高となることによって、棟高がさらに高まり、縦長の吹抜けの中央に棟木が配置されること、4.昭和30年代以降には吹抜けを持たない住宅がつくられ、敷地裏に別棟の住宅がつくられるようになること、を把握できた。すなわち、近代を通じて、延べ面積の拡大要求に伴い、町家は高さ方向に展開し、建築面積を増やしてこなかった。その一方で、雁木通りが確保され、その高さはオモテニカイの窓下までに抑えられきた。さらに、隣家2階を利用したり、中庭の向かい合わせて雪処理したりするなど、通り方向のつながりは、雁木、主屋、庭のゾーンで保たれてきた。昭和30年代以降の住宅は、こうした町家とは構成原理を異にするものとなっている。 水路を共用空間とする町並みとして、柳川市の周辺農村集落を対象として集落類型を行い、典型事例として、中牟田集落を選び、屋敷レベルで水系の分析をおこなった。その結果、柳川市の掘割と同様の「モタセ」と呼ばれる相互依存型水利システムが地区全域に行き渡っていることを把握した(担当:菊地)。 並木道を共用空間とする町並みとして、武蔵野新田集落において屋敷構えと街道の対応関係を分析した。その結果、敷地間口と水路の設定により、主屋の向きや付属屋の並びに相違が生まれ、特定の位置の樹木がウツギやカドギと呼ばれ、屋敷内で意味を持ち、並木をなすことを把握した(担当:伊藤)。 研究代表者と研究分担者がそれぞれの事例を相互に実測調査し、データを相互比較した。これにより、水・道・緑という共用空間の屋敷の側からの働きかけを統一的に把握した。
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Research Products
(6 results)