Research Abstract |
今年度のマグネシウムの表面酸化膜の構造解析に関する研究成果は以下のように要約される。 1.純マグネシウムおよびAZ合金 (1)電気化学的解析による不動態性評価 水酸化ナトリウムを主とした組成の電解液を用いたマグネシウムアノード酸化皮膜の生成挙動および電解液中への各種電解質イオンの添加効果について系統的な研究を行なった。アノード分極挙動から,MoO_4^<2->,SO_4^<2->,WO_4^<2->添加を除き,クエン酸イオン,F^-,Mn_4^-,SnO_3^<2->,SiO_3^<2->,PO_4^<3->,AlO_2^-,Ce^+,Na^+の添加で5Vの電流ピークおよびピーク幅は低下する傾向を示し,これらのイオンには皮膜の不動態性を向上させる効果があることがわかった。NaClに各種電解質イオンを添加した電解液中でのアノード分極挙動からは,MnO_4^-,SnO_3^<2->,SiO_3^<2->,PO_4^<3->,AlO_2^-,MoO_4^<2->,Ce^+,Na^+添加では電位は貴にシフトし,従ってこれらのイオンはマグネシウムの腐食を抑制する効果を持つことが示された。 (2)アノード酸化皮膜の幾何学的構造解析 5Vでの定電圧アノード酸化によって生成した皮膜は,高い電流の通過の結果厚い皮膜が生成し,電解液の種類によらず良好な耐食性を示した。この皮膜の構造を高分解能走査電子顕微鏡で詳細に検討した結果,アルミニウムのケラーモデルに類似の200nm程度の六角柱セル構造を持つことが初めて明らかになった。 2.超軽量Mg-Li-Y合金 アノード分極曲線の解析から純マグネシウムおよびAZ合金との表面特性の違いを検討した結果,0V付近での一段目の不動態化における電流値と同様に,5V付近の電流ピークにおいても10V以上のバリヤー皮膜生成の領域においても,MgLiY合金は99.95%MgとAZ91Dの中間の値を示した。バリヤー型皮膜生成においては,アノード酸化に伴いLiは容易に電解液側に移動して溶液界面でほぼ純粋な酸化物として外層を形成し,また外側への移動が遅いYとMgが中間層と内層を形成することが明らかになった。しかしポーラス型皮膜が生成する場合,LiもYも電解液に溶出するため皮膜中での濃縮は見られなかった。
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