Research Abstract |
[非平衡開放系での自己組織化原理を用いた自発流動の秩序化] 本年度は,"油水界面が固体壁面で形成するメニスカスの形状の周期的変化が,秩序だった自発流動発生の原因である"という仮説を検討するため,溶液のpHを制御することで,固体壁面のゼータ電位を変化させ,それにともなう自発流動の特性を検討した。また,界面活性剤溶液等で前処理を行ったガラス板を用いて,メニスカス変動の発生確率を調べた。その結果,ガラス壁面が負電荷を帯びるほど,カチオン性界面活性剤の吸着が顕著になり,大きなメニスカス変動が発生することがわかった。さらに,この状態では,油相から水相への界面活性剤の移動が速く,自発運動の持続時間は短くなることがわかった。一方,ガラス板を前処理した実験から,あらかじめガラス板にカチオン性界面活性剤が吸着した状態にしておくことが自発運動の発生確率を上げることが明らかとなった。これらの結果から,当初の予想通り,ガラス板の表面状態の変動に伴う,油水界面とガラス板とのメニスカスの変動が,自発運動の直接の原因となっていることが示された。 [非平衡開放系での自己組織化原理を用いた無機固体材料の構造設計] 本年度は,研究の第一段階として,ゲルの両端から,2種類のカチオン(Ba^<2+>,Sr^<2+>)と1種類のアニオン(SO_4^<2->)を供給し,ゲル中で形成される固溶体粒子の構造,内部化学組成の分布を電子顕微鏡とX線表面分析器を用いて観察した。その結果,BaとSrが周期的な組成変動を示す粒子が形成されるためには,ゲル中の高分子濃度,ゲル中に粒子が形成される位置,ゲルを固まらせるための時間などを,精妙に制御せねばならないことが明らかとなった。今後,これらの影響についての物理化学的原因を解明することによって,粒子中に,よく制御された周期的組成変動を形成させることが可能となると考えている。
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