2004 Fiscal Year Annual Research Report
糖添加によるマイクロ波乾燥時ならびに保存期間中のタンパク質の熱安定化
Project/Area Number |
15560653
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鈴木 哲夫 京都大学, 工学研究科, 助手 (50243043)
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Keywords | タンパク質 / 糖 / アモルファス / 熱安定化 / 活性保持 / マイクロ波乾燥 / 分子動力学法 / 水素結合 |
Research Abstract |
1.乾燥時ならびに保存期間中の酵素の活性保持 糖はスクロース、トハロース等を、酵素はアスコルビン酸オキシダーゼ(AOD)を用いて糖-酵素水溶液を調製し、市販の電子レンジによりマイクロ波乾燥を行った。得られた試料を真空下で試料温度を65℃に保ち、残存酵素活性の経時変化を調べた。全ての糖で乾燥時の失活が防止でき、さらに保存期間中の酵素活性も保つことができた。また、保存温度を45℃に下げて同様の保存実験を行ったところ、65℃で保存した場合よりも活性が低下するという興味深い結果が得られた。これは保存期間中において、熱振動により一部のタンパク質が本来の高次構造を復元しており、その割合が65℃の方が45℃の場合に比べて多かったためと考えられる。 2.糖分子の配列と熱安定化作用に関する検討 乾燥試料中のタンパク質に対する糖の熱安定化作用が糖分子の配列によりどのように変化するか検討するため、分子動力学(MD)シミュレーションを行った。モデルタンパク質としてアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)を用いた。ADHの表面の一部を切り出したものに、糖分子約30個を配置して、粒子数と温度一定のMDシミュレーションを実行した。糖分子の配列による熱安定化作用の違いを調べるため、糖分子をアモルファスに配置した場合と結晶状に配置した場合を調べた。タンパク質を構成する原子のみの平均二乗変位(MSD)を解析したところ、糖を配置した方がMSDが小さくなること、アモルファスの方が結晶状の配置より熱安定化作用が強い傾向があること、が分かった。また、熱安定化作用の違いは、糖分子-タンパク質間水素結合の寿命の違いにより生じていることが示唆された。
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