2003 Fiscal Year Annual Research Report
高温気相反応速度は超臨界水領域へ適用できるか―OHラジカルの反応を例として―
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15560660
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
高橋 憲司 金沢大学, 工学部, 助教授 (00216714)
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Keywords | 水和電子 / ヒドロキシラジカル / 溶媒和 / 解離的電子付着 / 電子親和力 / 電子移動反応 / 超臨界水 / パルスラジオリシス |
Research Abstract |
水中で,水分子のイオン化により生じる水和電子をOHラジカルへ変換するために,N_2Oが用いられている。そのため,N_2Oが電子を受け取る能力つまり電子親和力の知見は重要である。気相におけるN_2Oの電子親和力は+0.22eVとハンドブックなどに掲載されている。しかし,ab initio計算では-0.2eV程度となった。一方,水中ではN_2Oアニオンの電子親和力は+2eV程度であった。また,気相と水中でのN_2Oアニオンの解離ポテンシャル曲線を求めた。水中では,N-O結合が解離するためには,小さなポテンシャル障壁(約0.2eV)を越える必要があるが,過剰の振動エネルギーがあれば,容易にN_2とO^-アニオンへ解離することが示された。 高温水中での水和電子とN_2Oとの反応速度は,300℃まではアレニウス型温度依存性を示した。しかし,水の臨界温度近傍では,反応速度は急激に減少し,その後また増大した。このような特異な温度依存性は,電子とN_2Oの溶媒和の違いを考えることにより,定性的に説明できた。これまで,水和電子とN_2Oとの反応は,拡散律速反応と考えられていたが,300℃以下では,非常に小さな活性化障壁を越える反応であることが分かった。溶媒効果を取り入れたab initio計算により,N_2O^-アニオンの水中での生成自由エネルギーおよび反応の自由エネルギーが求められた。
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Research Products
(1 results)