2003 Fiscal Year Annual Research Report
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15560672
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮脇 長人 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (80012053)
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Keywords | タンパク質熱安定性 / サブユニット相互作用 / 酵素反応特性 / ゾル・ゲル転移 / 高分子間相互作用 / 協同的水和 / 水分活性 / 水溶液構造 |
Research Abstract |
タンパク質や多糖類などの生体高分子においては、その水和構造と機能との間には密接な関係がある。しかしながら、生体高分子機能は専ら高分子の分子構造の側からの研究がほとんどであり、これを溶媒側、特に生体高分子にとって最も重要な溶媒である水の側から機能にアプローチをしようとする試みはその重要性にもかかわらず十分にはなされていない。実際、例えばタンパク質の立体構造が決定されても、そこから機能へは未だ大きな距離があり、これを埋めるためには溶媒側からの研究は必要不可欠である。 生体高分子の水和においては、一般に、一分子の高分子に対して多数の水分子が水和し、その効果は協同的に作用すると考えられる。本研究においては、このような協同的水和がタンパク質、熱安定性、サブユニット相互作用、酵素反応特性、さらにタンパク質および高分子多糖類の分子間相互作用を反映するゾル・ゲル転移特性などに対して及ぼす影響を、溶液熱力学的手法を主要な手段として解析し、水溶液中における生体高分子機能の本質を明らかにすることを目的とする。 本年度はゼラチンのゾル・ゲル転移温度を各種糖類や尿素溶液中で、濃度を変化させて測定し、その一方で、ゾル・ゲル転移温度近傍で、同様の条件で粘度測定を行い、この値からゼラチン高分子間相互作用の解析を行った。その結果、ゼラチンのゾル・ゲル転移温度(Tm)、高分子間相互作用は、いずれも水分活性(aw)に対して直線的に変化し、このことは、上記の協同的水和モデルが、ゼラチンのゾル・ゲル転移および転移点付近での高分子間相互作用の変化にも適用可能であることを示している。さらに、それらの性質の水分活性に対する勾配(dTm/dawなど)は、共存低分子溶質の種類に応じて変化する水溶液構造の影響によるものであることが示唆された。
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[Publications] O.Miyawaki, Y.Norimatsu, H.Kumagai, Y.Irimoto, H.Kumagai, H.Sakurai: "Effect of water potential on sol-gel transition and intermolecular interaction of gelatin near the transition temperature"Biopolymers. 70. 482-491 (2003)