2003 Fiscal Year Annual Research Report
空中および地上電磁探査法の三次元解析による高信頼化(地すべり調査への応用)
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15560702
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐々木 裕 九州大学, 大学院・工学研究院, 助手 (10128027)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中里 裕臣 独立行政法人農業工学研究所, 造構部, 主任研究官
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Keywords | 電磁探査 / 地すべり / 逆解析 |
Research Abstract |
空中電磁法は斜面災害を引き起こす可能性のある脆弱部を広域的にかつ迅速に把握することができると期待されている。しかし、従来の解析手法は主に、地表が平坦な均質大地を仮定し等価比抵抗(見かけ比抵抗)を求め、その分布から比抵抗異常域を抽出するものであり、地下構造の二次元性や三次元性や地形の影響は全く考慮されていなかった。こうした従来の問題点を解決し、空中電磁法の高精度化を図ることが求められている。そこで本年度は地形を考慮できる三次元逆解析コードを開発し、数値実験を行って解析精度の検証を行うとともに、実際に地すべり地域で取得されたデータに適用した。数値実験は地すべり調査地域の実際の地盤条件や地形、ならびに測定条件(周波数やセンサーの対地高度)を模擬したものであり、測定条件や解析条件が解析精度にどのような影響を与えているかを明らかにする上で極めて有用であった。まず、地形を考慮した場合と考慮しない場合(地表面は平坦であると仮定した場合)を比較すると、予想されたように地形を考慮した場合の方が明らかに良い結果が得られた。次に対地高度に関する問題を検討した。すなわち、対地高度はヘリコプターに取り付けた電波高度計により測定しているが、山間地域の調査では植生や電波の指向性のために測定値は信頼できない。そのためわが国では、最大周波数の磁場データから算出される見かけ高度を対地高度として見なしている。数値シミュレーションでは、見かけ高度を対地高度として用いたことにより解析精度がかなり低下することを確認した。ただし、地形を考慮しない場合には、見かけ高度を与えた方が真の高度を与えた場合よりも極浅部を除いて解析精度が相対的に良いという意外な知見が得られた。この理由は、地形の影響が見かけ高度の中に、いわば吸収されているため比抵抗構造として地形の影響が現れなかったと考えられる。対地高度の問題は測定システムの改良(例えば、高精度のGPSをセンサー筐体に取り付ける)によっていずれは解決できる。しかし本研究では、対地高度が信頼できない場合でも対応できるように、対地高度を未知パラメータとして含める逆解析法を開発した。数値実験によれば、対地高度はほぼ正しく求められ、対地高度が正しく与えられた場合とほぼ同じ比抵抗構造を再現できた。実測データは高知県M地区の地すべり地帯で得られたもので、電気探査がすでに行われている地域のデータを中心に逆解析を適用した。空中電磁探査の結果は電気探査の結果と全般的に良い整合性を示した。このことから開発した解析手法は信頼性が高いと判断できる。
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