2003 Fiscal Year Annual Research Report
腐食連鎖系の栄養段階カスケードがプロセス連鎖に及ぼす影響
Project/Area Number |
15570013
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮下 直 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (50182019)
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Keywords | 食物連鎖 / 食物網 / クモ / トップダウン効果 / 土壌動物 |
Research Abstract |
本研究は,捕食被食系と分解系の連結を明らかにするために、2つのシステムで室内実験と野外実験を行った. 1.土壌生態系;スギ林内に多数生息するチビサラグモを用いて,その捕食圧が土壌動物やリター分解に与える直接的,間接的影響を調べる野外実験を行った.まずスギ林内に50cm四方の囲いを8個設置した(側面の高さ40cmのアクリル板,上部はあいている).囲いのなかにスギリターを敷き,4個の囲いにはチビサラグモを導入し,他の4個は対照区とした.さらに,囲いのなかに約5gのリターを入れたリターバッグを4個入れた.これらの設置は5月上旬に行い,以後定期的にクモの個体数を調査し,適宜個体の導入を行った.また8月,9月,11月には粘着トラップを設置,9月には土壌を採取しツルグレンで土壌動物の採集を行い,さらに9月にはリターの分解量を測定した.現在分析が済んでいるのは,8月の粘着トラップと9月の土壌動物,および9月の分解量であるが,今のところいずれも有意な違いは見られていない.この実験は本年6月まで継続し,引き続き土壌動物や分解速度の変化を追跡する予定である. 2.淡水生態系;捕食者であり分解者でもあるアメリカザリガニと分解者のミズムシ,および分解物を食するユスリカ幼虫の関係を調べるための予備実験を行った.まず,ザリガニ存在下でミズムシを飼育したところ,構造物を作ってもほとんどがザリガニに捕食されたため,この2種を含む系の実験を断念した.次に,ザリガニおよびミズムシの分解物をユスリカ幼虫に与え,生存率と成長速度をリターの溶出水のみを与えた場合と比較した.その結果,ミズムシの分解物はユスリカの成長や生存率を促進したが,ザリガニの分解物は,逆に阻害することがわかった.今後,カスケード効果や雑食の効果を明らかにするには,より空間的異質性を高めた実験を行う必要がある.
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