2004 Fiscal Year Annual Research Report
腐食連鎖系の栄養段階カスケードがプロセス連鎖に及ぼす影響
Project/Area Number |
15570013
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮下 直 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (50182019)
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Keywords | 生物間相互作用 / トップダウン効果 / 分解系 / トビムシ / クモ |
Research Abstract |
本年度は,昨年度から開始した野外実験を引き続き行った.まず実験設定の概要について説明する.スギ林内に多数生息するチビサラグモを用いて,その捕食圧が土壌動物やリター分解に与える直接的,間接的影響を調べる野外実験を行った.昨年度の5月上旬に,スギ林内に50cm四方の囲いを8個設置した(側面の高さ40cmのアクリル板,上部はあいている).囲いのなかにスギリターを敷き,4個の囲いにはチビサラグモを導入し,他の4個は対照区とした.さらに,囲いのなかに約5gのリターを入れたリターバッグを4個入れた.以後定期的にクモの個体数を調査し,適宜個体の導入を行った.5月と9月には粘着トラップを設置しトビムシやハエ目成虫などの個体数を調査した.また,9月には以下の調査を行った.1)ツルグレンによる土壌動物の採集,2)リターの分解量の測定,3)土壌含水率の測定,4)土壌中の微生物バイオマスの測定. その結果,クモ導入区では,ハエ目成虫などの飛翔昆虫量には差が見られなかったが,トビムシ個体数は対照区より有意に少なくなった.しかしながら,リターの分解率には昨年同様,処理間で違いは見られなかった.さらに,土壌含水率,微生物バイオマスともに処理間で違いは生じていなかった.したがって,クモによるトップダウン効果は,菌食者であるトビムシには現れていたが,その間接的影響は微生物量や,さらにその一段階下の分解率にまでは反映されていないことがわかった.以上のことは,分解系においては,栄養段階カスケードが働きにくく,そのため食物連鎖とプロセス連鎖の連結が普遍的に認められるとは言い難いことが明らかになった.
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