2004 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫における行動補償と神経系の可塑性についての研究
Project/Area Number |
15570065
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
加納 正道 愛媛大学, 理学部, 助教授 (80183276)
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Keywords | コオロギ / 空気流感覚 / 尾葉 / 逃避行動 / 行動補償 / 巨大介在神経 |
Research Abstract |
空気流刺激に対するフタホシコオロギの逃避行動は、腹部末端に一対存在する尾葉上の多数の機械感覚毛からの入力により解発される。正常なフタホシコオロギでは、逃避の方向は刺激空気流の方向とほぼ反対であることから、この感覚系は空気流の方向を正確に認識することができることがわかる。片側の尾葉の除去により逃避方向は不正確になるが、自由に動き回れるような状態で飼育すると、約2週間で補償的回復を示す。本申請研究は、この回復の過程で運動出力のコピー信号、すなわちEfference copyが自身の感覚系の異常を知り神経系の反応性を修正するために必須であることを証明することを第一の目的としている。これまでに、腹部神経索を下行する介在神経が歩行中にバースト活動を繰り返し、その活動は歩行の速度や方向をコード化していることを明らかにしてきた。しかしながら、それらの活動はコオロギが動くことによって生じた何らかの自己刺激を見ているのではないか、という疑義が唱えられた。これに対し、このバースト活動が実際の歩行が開始する前からスタートすることを証明するため、コオロギの動きをモニターするビデオ画面内に下行性介在神経の活動を同時に記録する装置を開発し調査を行った。その結果、下行性介在神経のバースト活動はコオロギの体のどの部分(例えば、触角や腹部等)の動きよりもビデオフレームにおいて平均1.9コマ、時間にすると約63ミリ秒先行していることが明らかとなった6また、実際に体の前進運動を作り出す肢(6本のうちのいづれか)の動き開始に対しては、平均5.9フレーム、時間にして約197ミリ秒先行していることが明らかとなった。今回得られた結果は、行動補償における下行性介在神経のバースト活動の重要性を裏付けるものと考えられる。また、それら下行性介在神経の細胞内記録および形態的同定についても着手したところである。.
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Research Products
(5 results)