2005 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫における行動補償と神経系の可塑性についての研究
Project/Area Number |
15570065
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
加納 正道 愛媛大学, 理学部, 助教授 (80183276)
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Keywords | コオロギ / 空気流感覚 / 尾葉 / 逃避行動 / 行動補償 / 巨大介在神経 |
Research Abstract |
これまでの研究から、片側尾葉除去後のフタホシコオロギにおいては、除去後の歩行量が逃避行動、特に逃避方向の補償的回復の程度と関係あることが明らかとなっている(Kanou and Kondoh,2004)。そのため前年度(平成16年度)は、人為的に歩行量を変化させることができる装置の開発を行い、これを完成させた。本年度(平成17年度)はこの装置を用いて、片側尾葉除去後のフタホシコオロギに、様々な量の歩行を様々なタイミングで誘発することにより、それらの条件が最終的な補償の程度とどの様な関係を示すかを明らかにした。まず異なる歩行量を経験させたコオロギ群で逃避方向の回復を調査したところ、ともに切除後10日目以降は逃避方向に変化が生じないことが明らかとなった。このことは、それよりも以前の歩行経験が逃避方向の回復の程度を決定することを示すものであった。次に、切除後10日目までに経験した歩行は全て同じであるのか、あるいは10日目までの間に歩行が特に効果的にはたらく期間があるのかを明らかにするために、片側尾葉除去後のコオロギに、補償的回復に十分な歩行量を刺激期間をスライドさせながら経験させた。歩行誘発期間以外は狭い管ビンの中で拘束飼育したが、そのような飼育条件では逃避方向に補償的回復が起こらないことは既に報告済みである(Kanou et al.,2002)。その結果、切除後の早い時期には歩行量の増加と共に回復が促進されるが、遅い時期には歩行量の増加にも関わらず回復が起こらなかった。この事は、歩行量が行動補償に影響を与える期間が切除後の早い時期に限定されていることを示す。これは、感覚除去後の行動の補償的変化においても臨界期があることを示唆するもので、脊椎動物における刷り込みや両眼視機能の発達における臨界期あるいは感受性期の存在と類似していることから、神経系の可塑的性質における種をこえた共通の特性の一端が現れている可能性がある。これは非常に興味深く、今後の課題として研究を継続する十分な価値のあるものと考える。
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Research Products
(7 results)