Research Abstract |
本年度はスジゴケ科ミドリゼニゴケ属Aneuraについて葉緑体rbcL遺伝子の塩基配列に基づく系統解析(出口博則・坪田博美)と形態学的研究(出口博則・山口富美夫)を中心に進め,また,ウスバゼニゴケの胞子体の研究も行った.系統解析の結果,スジゴケ科の苔類に関して,広義のAneura属に含まれるヤワラゴケ属Lobatiriccardiaと狭義のAneura属はそれぞれ単系統で,姉妹関係になった.この系統関係から,Furuki(1991)が提案したLobatiriccardiaを独立した属と認めるという分類学的な扱いは,妥当なものと結論した.そこではA.maximaは,Aneura属の中で,系統的に異なる2つのクレードにまとめられた.Vandiemenia属について,昨年度のものと異なった遺伝子を用いて系統解析をおこなった.また,形態観察では,Amaximaおよび異名を含む近縁の種との関連を研究し,新奇分類形質を見出すことに成功し,種間関係を明らかにした.これをもとに分類学的再検討をおこなうと共に,分子系統樹との対比を行った,A.pcllioidesは同属のA.blasioidesとA.gemmiferaとともに1つのクレードを形成し,A.maximaはその姉妹群となった.また,Aneura maximaとA.pellioidesは,日本国内における分布域も異なり,A.maximaが主に九州北部以南に分布するのに対し,A.pellioidesが九州より北に分布することが明らかになった.本研究で,A.pellioidesは,A.maximaとは区別される,独立した種であるとの提案に至った(古木達郎).
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