2004 Fiscal Year Annual Research Report
ニホンカナヘビ(爬虫綱,トカゲ目)に関する個体群分類学的研究
Project/Area Number |
15570081
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
太田 英利 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (10201972)
|
Keywords | ニホンカナヘビ / 屋久島 / 北海道 / 分類 / 生物地理 / 形態形質 / 酵素タンパク / ミトコンドリアDNA |
Research Abstract |
前年度にひき続き各地で標本の採集を行なった.得られた標本は写真で生時の体色を記録した後,肝臓を摘出した.肝臓はアロザイム法,ならびにミトコンドリアDNA配列決定法による遺伝的解析に供した.本体はエタノールに液浸し,形態形質の観察・比較に供した.今回得られた標本,これまでに収集された標本,他の研究者・研究機関から借用した標本を用い,12の計数形質,15の測定形質,3つの定性形質を産地間で比較した. このうち計数形質では,12形質のうち前肢や後肢の付着部における背部大型鱗の列数をはじめ3形質で,トカラ列島の中・北部の集団と鹿児島県をはじめとする本土集団との問で明瞭な差異が認められた,なおこのうち2形質では屋久島の集団は両者の中間的な状態を示した.前年度,同様にトカラ中・北部と鹿児島県本土部との問で差異が認められた他の2計数形質では,本土,とりわけ本州内で変異が著しく,後者よりもむしろ前者に近い状態を示す集団も認められた.測定形質については主成分分析によって一括して比較したところ,プロポーションではトカラ中・北部の集団と鹿児島を含む本土の集団が比較的大きく分離し,屋久島の集団はその中間のややあと寄りに位置付けられた.体サイズの絶対値に関してはトカラ中・北部や屋久島のものも含むサンプル全体で地理的な規則性は認められず,ただ屋久島の高高度域の集団に顕著に大きな値を示す傾向が認められた.定性形質のうち腹鱗の表面の状態が,九州周辺の島嶼部の集団では隆起が顕著なのに対し,九州本土部および本州・北海道(周辺島嶼を含む)の集団では隆起は微弱か完全に消失していた.これらの結果,ならびに現在までに得られている遺伝的解析の結果を総合すると,ニホンカナヘビがトカラ・大隈諸島の集団と本土の集団に2分されることが強く示唆された.
|
Research Products
(3 results)