2005 Fiscal Year Annual Research Report
Fasを介するアポトーシスにおけるHGFの活性調節が及ぼす細胞増殖制御機構の解明
Project/Area Number |
15570112
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
傳田 公紀 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 助手 (50212064)
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Keywords | 肝細胞増殖因子(HGF) / 血液凝固線溶系 / セリンプロテアーゼカスケード / Kunitz型インヒビター / セクレターゼ / アポトーシス |
Research Abstract |
肝細胞増殖因子(HGF)の局所的活性発現を担うプロテアーゼを制御する2つの阻害因子(HAI)が申請者らにより膜結合型インヒビターとして同定された。HAIは,生合成後に細胞表層に選別輸送され膜型分子となった後に複数の分泌型分子ヘプロセッシングされることがわかった。また最近,タンパク質間相互作用スクリーニングにより,HAIがPDZドメインを介しアポトーシス制御因子と考えられるタンパクと相互作用することを発見した。本研究では,細胞死に関わるシグナル伝達調節因子と相互作用することでHGF活性化制御に関わる細胞増殖調節の基本メカニズムを分子レベルで解明することを目的として,HAIの機能解析を行い現在までに以下の知見を得た。 I.HGF活性化プロテアーゼの阻害に対するHAIの個々の機能ドメインの生理的役割を解明するため,各機能ドメインの欠失体・点突然変異体を作製し,それら発現タンパクについて機能変化を解析した結果,HGF activatorとの相互作用に第1Kunitzドメインが重要であることがわかった。プロセッシングにより生成する複数の分子型によって阻害作用が異なる結果が得られた。他のプロテアーゼを阻害すると考えられる第2Kuntizドメインの機能的役割についても,HGF活性が関与する細胞増殖調節機構に何らかの役割を有する可能性があり,現在解析中である。 II.HAIの膜結合型から分泌型が生成するプロセッシングを司る分泌酵素(secretase)を探索することを目的として,タンパク質間相互作用スクリーニングを行い種々のタンパクが該当する可能性を見出した。これら膜型HAIと相互作用する因子のひとつは,HAIのC末を介して結合する細胞質ホスファターゼである。現在アポトーシス制御因子として報告されているこの細胞質分子の培養細胞系で安定発現株を作製し,ホスファターゼ活性を含めたこの酵素分子の細胞増殖制御に対する検討を行っている。 III.生殖細胞の分化には,多数のプロテアーゼとそのインヒビターが関わるアポトーシス現象がみられる。HAIの精子形成における役割を調べるため,精巣組織でのimmunohistochemicalな解析を行った結果,これら二種のHAIが異なるステージで発現していることが明らかになり,HGFの活性制御を担うインヒビターが精子粒子の成熟において別個な機能的役割をする可能性が示唆された。 発現の組織特異性や相互作用するタンパク因子,あるいはノックアウトマウスの表現型が解析されてもHAIの真の生理的機能が解明されたとは未だ言及しがたい。組織障害特異的なあるいは胎生期初期に必然的にHGFの局所的な活性発現が営まれるうえで,HAIの細胞死における役割を明らかにするため,今後もさらなる解析を行う予定である。
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