2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15570132
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
齊藤 修 財団法人東京都医学研究機構, 東京都神経科学総合研究所, 研究員 (60241262)
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Keywords | RGS / Gタンパク / 受容体 / Gq / 細胞内カルシウム / 小脳 / プルキンエ細胞 |
Research Abstract |
RGS8は、Gαとの反応部位であるRGSドメインと短いN端配列のみから成る比較的低分子のRGSタンパクである。このRGS8は、活性化されたGαiファミリーに直接結合しGAPとして作用して、Gi系制御を行う。一方、Gq系については、生化学的解析で、かなりGαqへの親和性が低いことが明らかになった。しかし、種々のGq共役受容体と共発現させ解析すると、RGS8はムスカリニックm1受容体とサブスタンスP受容体の応答を強く抑制することが判明した。しかし、同じGq受容体でも、ムスカリニックm3受容体の応答は、RGS8は抑制することができなかった。更に、最近見つかった分子種のRG38Sは、N端部9残基のみの違いにも関わらず、いずれのGq共役受容体に対してもその抑制効果は弱かった。このように、「RGS8は、特定のタイプのGq受容体系を選択して、その応答を抑制する。しかし、N端9残基が異なるRGS8Sは、この能力を欠いている。」ことが明らかなった。本研究は、どのような機構によって、RGS8が、受容体選択的にGq系を阻害するのかを明らかにしようというものである。おそらく、RGS8は、本来親和性が低いためGqタンパクにはなかなか近づけないが、RGS8がN端を介して特定の受容体と直接相互作用すると、RGS8は細胞膜上のGqタンパクの近傍にリクルートされ、そしてGq制御因子として機能することができるようになるのではないだろうか。 15年度は、RGS8のGAP活性がそのGq系制御能に必要かどうか検討を行った。即ち,RGS8の、Gq制御の機構を明らかにしていくには、Gq制御にRGS8のN端部とそのRGSドメインの機能のどちらか一方が、あるいは両方が寄与しているのかが、まず重要な問題である。Gq系の制御ができるRGS8とその能力のないRGS8Sの違いは、N端9残基の配列だけである。そのため、一つの可能性としては、Gq系の制御には、RGS8のN端9残基のみが必要で、これが直接受容体に作用して阻害作用を示すことが考えられる。この場合、RGS8のGα結合能・GAP活性は、そのCq系の阻害作用に必要ないことになる。そこで、この可能性を検討するため、RGS8のRGSドメイン内に点変異を導入し、Gαに結合できなくした点変異体RGS8(L153F)を用いて、そのGq系制御能を検討した。ツメガエル卵母細胞に、このRGS8(L153F)と、ムスカリニックm1受容体、あるいはサブスタンスP受容体を発現させ、次いで受容体をリガンドで刺激した。そして、Gq系の応答を、卵母細胞のCa2+依存性Cl-電流を指標に解析した。結果、RGS8は、Gα結合能を失いRGSドメインが機能しなくなると、Gq制御能が激減してしまうことが明らかになった。しかも、その制御活性は、RGS8Sよりも弱いことが判明した。一方、機能解析を行った卵母細胞での、RGS8,RGS8S、RGS8(L153F)の発現レベルをウエスタン解析で比較すると、いずれのタンパクも同程度に発現していることが確認された。これらのことから、RGS8のGq制御には、そのN端9残基とRGSドメインのGAP活性の両方が必要であることが判明した。
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[Publications] Saitoh, 0. et al.: "Distribution of regulator of G protein signaling 8 (RGS8) protein in the cerebellum."THE CEREBELLUM. 2. 154-160 (2003)
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[Publications] Saitoh, O., Kubo, Y.: "Biochemical and physiological properties of regulator of G protein signaling 8."Recent Research Developments in Biophysics and Biochemistry (Research Signpost). 3. 269-289 (2003)
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[Publications] Kamiya, T., Saitoh, O., Nakata, H.: "Oligomerization of adenosine A2a and dopamine D2 receptors in living cells."Biochem.Biophys.Res.Comm.. 306. 544-549 (2003)
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[Publications] Nakata, H., Yoshioka, K., Saitoh, O.: "Hetero-oligomerization between adenosine A1 and P2Y1 receptors in living cells : Formation of ATP-sensitive adenosine receptors."Drug Development Research. 58. 340-349 (2003)
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[Publications] Saitoh, O., Odagiri, M.: "RGS8 expression in developing cerebellar Purkinje cells."Biochem.Biophys.Res.Comm.. 309. 836-842 (2003)
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[Publications] Masuho, I., Itoh, M., Itoh, H., Saitoh O.: "The mechanism of membrane-translocation of RGS8 induced by Gα expression."J.Neurochem.. 88. 161-168 (2004)