2006 Fiscal Year Annual Research Report
バイオイメージング法を用いたマウス味蕾内情報処理ネットワークの解析
Project/Area Number |
15570138
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Research Institution | Saitama Institute of Technology |
Principal Investigator |
熊沢 隆 埼玉工業大学, 工学部, 教授 (90234517)
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Keywords | マウス味蕾細胞 / 細胞内カルシウム / ペリジェンマル細胞 / ATP / セロトニン / アセチルコリン |
Research Abstract |
単一味蕾中には50個程度の味蕾細胞が含まれる。このうち味神経とシナプスを形成している細胞は2〜3個と報告されている。我々は、味神経とシナプスを形成していない細胞の役割を明らかにするために、味蕾構造を保存した標本を作製し、細胞内カルシウム濃度変化を指標として味蕾細胞の基底膜に存在する神経伝達物質受容体の探索と応答する細胞の味蕾内分布を調べた。この結果、1)味蕾細胞基底膜にはセロトニン受容体、アセチルコリン受容体、ATP受容体が発現していること、2)刺激後、各細胞の応答発現が同時に引き起こされないこと、3)味蕾内のかなりの数の細胞が応答すること、4)細胞間には電気シナプスが存在することを見出した。これらの結果は、味蕾内には細胞間ネットワークが存在し、何らかの情報処理がなされていることを示唆している。 一方、味蕾細胞の周囲に注目すると、味蕾細胞の集団はperigemmal細胞によって覆われ、味蕾という構造物を構成している。従来perigemmal細胞は支持細胞として機能すると考えられてきた。我々は、効率よくカルシウム結合性蛍光色素(Fura-2)を細胞内に導入する条件検討を行い、一定濃度のPluronic F-127を用いるとperigemmal細胞内にFura-2を良好に導入できることを見出した。この条件下で、味蕾細胞にATPを与えるとperigemmal細胞も味蕾細胞と同様にATP、セロトニン、アセチルコリンに対して応答を示すことを見出した。さらに、いずれの応答も数個のperigemmal細胞を起点に周囲のperigemmal細胞あるいは味蕾細胞に伝播されること、ギャップジャンクションの阻害剤であるオクタノールで処理すると一部の細胞の応答が抑制されることがわかった。以上の結果は、味蕾内での情報処理は単に味蕾細胞間だけで行われているのではなく、perigemmal細胞も関与している可能性を示唆している。
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