2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15580011
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 治人 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (60225886)
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Keywords | 光合成 / イネ / 高二酸化炭素 / 転流 / シンク / 登熟 / 13C |
Research Abstract |
本研究では高二酸化炭素がイネ植物体の炭素代謝にどのように影響するかをソースである葉身、シンクである穂、それらを結びつける転流および一時貯蔵サイトである葉鞘について調査を行い、最終的に収量へ及ぼす影響を解析する。今年度は高二酸化炭素の収量性への影響を生理学的・生態学的に調査するために環境省地球環境保全試験研究費でのFACEプロジェクトサイト(岩手県雫石町)を、またより細かい解析を行うために東京大学大学院農学生命科学研究科に設置されている「地球環境再現装置」を使用してイネ植物体を育成した。得られた結果は次のとおりである。 1)ソースである葉身において、高二酸化炭素による光合成のダウンレギュレーションを確認し、その際の炭酸固定酵素サイトの二酸化炭素濃度を算出した。その結果、育成時二酸化炭素濃度が上昇すると、気孔空隙の二酸化炭素濃度はそれに伴って上昇するが、炭酸固定サイトの二酸化炭素濃度は低く抑えられることが判明した。また光合成に関係するCarbonic anhydraseやRubisCOの酵素活性・含量ならびにmRNA発現量ともに二酸化炭素濃度上昇に伴って低下した。 2)穎果内のデンプン合成関連酵素活性をシンクの活性として測定したが、今年度の岩手県地方は低温・日照不足の影響で登熟関係のデータを収集することは困難であった。 3)13Cで同化産物をラベリングし、一定時間後の植物体内の13C分布より、同化産物のソースである葉身からの流出速度、穂への流入速度、葉鞘への一時貯蔵量を測定した。今年度は低温・日照不足の影響で光合成産物が穂に転流しにくく、稈に蓄積する傾向が見られたが、転流や炭素分配には二酸化炭素の影響は見られなかった。
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