2004 Fiscal Year Annual Research Report
大阪湾沿岸域における海浜植物の海流散布のメカニズムとその保全・再生に関する研究
Project/Area Number |
15580026
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
上甫木 昭春 大阪府立大学, 農学生命科学研究科, 教授 (70152858)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 保 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 教授 (00244690)
石田 弘明 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 助手 (80311489)
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Keywords | 海浜植物 / 海流散布 / ハマビシ / 漂着種子 / 海浜形態 |
Research Abstract |
本年度は、大阪湾沿岸域にかつて存在し、現在絶滅状態にあるハマビシの種子を用いて、海流散布の実験的検証を試みた。 まず、事前実験よりハマビシの種子の浮遊能力(浮遊後8日経過で100%水没)を明らかにし、この特性を踏まえて、かつてハマビシが生育した、せんなん里海公園、男里川河口部、須磨ノ浦、厚浜海水浴場の4地点より、種子1万粒を海面に散布し、その漂着状況を散布3日後、7日後に確認した。 その結果、有効な漂着データが得られた厚浜、須磨における漂着状況を検討すると、大阪湾流に対して順方向、逆方向の漂着種子数は、自然のままの海岸線を有した自然タイプの厚浜では両日共に順方向に99%以上、逆方向に1%未満の漂着であったのに対し、周辺に人工構造物が多く立地する人工タイプの須磨では逆方向に20%、5%と、自然タイプに比べ逆方向への漂着が多い傾向にあった。順方向への漂着状況は、両海浜において両日共に、単体で漂着する種子に比べ、海藻などに付着して漂着する種子が65〜80%と多い傾向にあり、特徴的なトゲを活かしたハマビシ特有の拡散戦略であると類推された。 漂着種子数に影響すると考えられる空間特性は、散布点からの距離、大阪湾流に対する角度、突堤などの垂直方向の構造物の積算延長、離岸堤などの水平方向の構造物の積算延長の4項目とし、漂着種子数と空間特性の関係は相関係数と、ステップワイズ法による重回帰式より捉えた。その結果、自然タイプの厚浜では、大阪湾流に対する角度が大きいほど漂着種子数が多く、人工タイプの須磨では、垂直方向の構造物の積算延長が長いほど、漂着種子数が少なくなる傾向にあった。 以上の結果より、海流散布のメカニズムに関する知見として、海流散布では必ずしも近い距離に漂着するのではなく、浮遊可能な範囲内において、(1)自然条件下では大阪湾流に対する汀線の角度が漂着機会を規定し、(2)突堤などの人工構造物が存在する海浜では、構造物が海流に影響を与え、種子拡散の阻害要因となり、(3)ハマビシは種子の浮遊能力が低いながらも付着散布で多くが拡散していたことなどが明らかとなった。
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