2005 Fiscal Year Annual Research Report
大阪湾沿岸域における海浜植物の海流散布のメカニズムとその保全・再生に関する研究
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15580026
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
上甫木 昭春 大阪府立大学, 大学院・生命環境科学研究科, 教授 (70152858)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 保 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 教授 (00244690)
石田 弘明 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 講師 (80311489)
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Keywords | 海浜植物 / 海流散布 / ハマビシ / 漂着種子 / 海浜形態 |
Research Abstract |
本年度は、海浜の環境特性から捉えた海浜植物の分布特性を整理するとともに、ハマビシを用いた海流散布の実証的検証を踏まえ、大阪湾沿岸域における海浜植物の分布特性からみた保全のあり方を探った。 その結果、種数が多く、「多構成種-広域」タイプの海浜では保全の継続が望まれ、このうち消失危惧種が生育する海浜では、人の出入りを制限し、早急に保全地域に指定する必要があり、その中で開放度が高い海浜は湾内の種子供給源となる可能性が考えられる。種数が少なく、「裸地」タイプの海浜については、規模や利用の改善から保全の方向を検討する必要があるといえるが、このうち小規模で周辺に人工構造物を有した全域利用の海浜は、現状では海流散布による自然回復が困難であると考えられ、現状利用の継続が想定される。種数が多く、裸地タイプの海浜は、部分制限利用の導入で、成帯構造の多様化をはかり、種数が少なく「単一植生-部分」または「混在」タイプの海浜は、隣接海浜の連続化や海浜の開放度を高めることで種数の増加につなげることが望まれる。種数が多く、「単一植生-部分」または「混在」タイプの海浜では、海浜植物の生育範囲のみ利用制限し、成帯構造の発達を促すことが考えられる。 以上より、大阪湾沿岸域の将来像を考えると、保全の中心となる海浜や早急に保全に特化すべき海浜は、淡路島北部地域や泉南市から阪南市にかけての地域、紀北地域にあり、これらは将来的に大阪湾沿岸域の種子供給源になる可能性があると考えられる。一方、現状利用の継続が想定される海浜は、須磨や大阪府泉南地域に位置し、これらの海浜の海浜植物相は現状維持に留まると考えられる。また、部分的な保全が望まれる海浜は、淡路島南部、西宮地域にあり、ここは保全と利用が共存するゾーンになると考えられる。
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