2003 Fiscal Year Annual Research Report
ウイロイド感染で生じるRNAサイレンシングの病理学的及び農学的意義の解析
Project/Area Number |
15580030
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
佐野 輝男 弘前大学, 農学生命科学部, 助教授 (30142699)
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Keywords | ウイロイド / RNAサイレンシング / 病徴回復 / siRNA |
Research Abstract |
子葉期のトマトにpotato spindle tuber viroid (PSTVd)を感染させると約2週間後、第3〜4本葉に葉巻とエソ症状が現れ、植物体は一旦強く矮化する。しかし6〜7週間後、新たに展葉してくる第9〜10本葉から病徴は回復し、それ以降展葉してくる葉には全く葉巻きとエソ症状は観察されない。また第9〜10本葉より上位葉では植物体の矮化も急速に回復する。この条件で、36本の子葉期のトマト子葉にPSTVdを接種し、2日目から2日間隔で18日目まで、さらに25,30,45日目の合計12回、それぞれ3本を任意に選び、第1本葉から葉原基及び生長点までの全ての葉を分取し、各葉位毎に3本分をまとめて低分子量RNAを抽出した。定量後、ノザンハイブリダイゼーション或いはマイクロプレートハイブリダイゼーションで各葉位のPSTVdRNAとPSTVd特異的small interferring RNA (siRNA)の蓄積量を経時的に分析した。その結果、12日目にPSTVdが第3,4,5,6本葉で、またPSTVd特異的siRNAも第4,5本葉で初めて検出レベルに達した。 14日目には第3本葉に初めて葉巻症状が現れ、PSTVdは生長点を除く全ての葉と葉原基(第1本葉〜第9本葉原基)で検出レベルに達し、PSTVd特異的siRNAも第2本葉から第9本葉原基で検出レベルに達した。16日目以降も同様の状態が続き、PSTVd及びPSTVd特異的siRNAの蓄積量は上昇した。しかし、顕著に病徴が回復する第9本葉より上位の葉では、第3から8本葉に比べPSTVdの蓄積量が明らかに低下していた。以上の結果から、(1)PSTVd感染トマトでPSTVd濃度が高くなるとRNAサイレンシングが誘導され、PSTVdと共にPSTVd特異的siRNAも生長点を除く全身に蓄積し、(2)RNAサイレンシング誘導後に分化してくる葉原基(本実験では第9或いは第10本葉以降)では分化の初期からRNAサイレンシング状態に置かれるためにPSTVdの増殖/蓄積が抑制され、(3)結果として病徴の回復が生じるものと考えられた。
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[Publications] Owens R.A.et al.: "Identification of a novel structural interaction in Columnea latent viroid"Virology. 313(2). 604-614 (2003)
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[Publications] Sano, T., Matsuura, Y: "Accumulation of short interfering RNAs characteristic of RNA silencing precedes recovery of tomato plants from severe symptom of potato spindle tuber viroid infection"J.Gen.Plant Pathol.. 70(1). 50-53 (2004)