2005 Fiscal Year Annual Research Report
癌腫病菌カバノアナタケに対するシラカンバの感染特異的タンパク質の網羅的解析
Project/Area Number |
15580119
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
横田 信三 宇都宮大学, 農学部, 助教授 (60210613)
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Keywords | カバノアナタケ / シラカンバ / 菌感染特異的タンパク質 / プロテオーム / 樹病 / 二次元電気泳動 / オキシダティブバースト / シャペロニン |
Research Abstract |
本研究では、カバノアナタケIO-U1株の感染によって、シラカンバ幼植物体内に生成する感染特異的タンパク質を検出し、質量分析後、データーベース検索により、検出されたタンパク質の同定を行った。これまでの研究から、菌接種後2日目の植物体から多くの菌感染特異的タンパク質が生成することが判明しているため、本研究でのサンプルも菌接種後2日目のものを使用した。カバノアナタケIO-U1株を接種したシラカンバ幼植物体No.8(処理区)、対照区1(無菌・無傷)及び対照区2(傷害)の各植物体を、菌接種後2日目に採取した。これらを液体窒素で急速凍結後、粉砕し、タンパク質抽出緩衝液を用いて粗タンパク質溶液を調製した。得られた粗たんぱく質溶液をトリクロロ酢酸、氷アセトンで順次処理してタンパク質を沈殿させ、タンパク質可溶化緩衝液(尿素、チオ尿素、CHAPS,DTT,IPG buffer)で溶解した後、メンブレンフィルター濾過及びゲル濾過を行って、タンパク質サンプルを調製した。このサンプルを色素結合法によってタンパク質含量を測定した後、二次元電気泳動に供した。泳動後ゲルを銀染色し、乾燥後スキャナーでコンピューターにその画像を取り込み、二次元電気泳動画像解析ソフトウェアを用いて画像解析を行った。その結果、対照区1では641個、対照区2では526個、そして処理区では735個のタンパク質スポットが検出された。また、これらのタンパク質スポットの比較により、169個のタンパク質スポットが菌感染特異的タンパク質として検出された。同じタンパク質サンプルを用いて、同様に二次元電気泳動を行い、ゲルを修正銀染色した。昨年度の研究で生成が推定された12個のタンパク質スポットをゲルから切り取り、トリプシンを用いてゲル内消化した。得られたペプチドサンプルをZipTipで脱塩し、マトリックス支援レーザー脱離イオン化・飛行時間型質量分析計を用いて分析した。尚、マトリックスとしてシナピン酸を用いた。得られた各サンプルのマススペクトルのペプチドマップを用いて、Mascotによりデータベース検索した。その結果、グルタチオン S-トランスフェラーゼ(GST)及び60kDaシャペロニン(Hsp60)が、菌感染特異的タンパク質として同定された。GSTは、スーパーオキシドや過酸化水素などの活性酸素種から植物自身の細胞や組織を保護するために誘導される。従って、カバノアナタケIO-U1株に感染したシラカンバ幼植物体No.8において、防御機構としてオキシダティブバーストが生じていると考えられる。Hsp60は、新生タンパク質の折りたたみを行う機能を有する。従って、菌感染したシラカンバ幼植物体内で、活性化する防御遺伝子の発現による新生タンパク質の増加に伴って、Hsp60も活性化されると考えられる。
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