2005 Fiscal Year Annual Research Report
着葉分布の不均一性の評価:林冠構造の複雑さは森林のガス代謝にどの程度影響するか?
Project/Area Number |
15580129
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
水永 博己 静岡大学, 農学部, 教授 (20291552)
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Keywords | 森林の葉分布 / クラスター / 林冠のモザイク構造 |
Research Abstract |
1:スギ老齢林の葉の三次元構造と枝葉の受光構造 昨年度、測定したスギ着葉三次元分布のデータを用いて、葉クラスターの解析を行った。葉密度の変動は老齢個体ほど大きく、また着葉空間内の葉の無いセルの割合が大きくなった。ある閾値以上の葉密度を持つセルの連続体をクラスターとみなして、解析したところ、老齢スギほどクラスターの分割指数は大きくなった。また小枝単位での受光効率は低下し、また角度依存も小さくなった。すなわち老齢スギほど、葉面積指数の低下、葉のクラスター化、小枝単位での受光効率の低下から樹冠全体の単位面積あたり受光量を低くしていた。 2:ヒノキ老齢林の葉の三次元分布 ヒノキ88年生の林分から、個体の大きさの異なる三個体を選び、葉の三次元分布を測定した。このデータについては現在解析中である。 3:ブナの着葉分布 ブナ林冠にアクセスできる測定用タワーを用いて、ブナの葉分布密度を25cm x 25cm x 20cmの単位で計測した。6m x 9mの投影面積内にある4個体の樹冠である。また林冠内から20本の小枝を採取し、小枝の受光効率をシルエット画像と葉面積の比により測定した。この測定された葉密度を利用して受光強度別葉面積を計算し、樹冠光合成速度の推定を試みた。 4:林冠の複雑さと林床のガス交換速度 スギ人工林に複数の林冠モザイク構造を仮想し、そのモザイク構造が林床の光合成に及ぼす影響を、ターゲット植物のイチイガシと競合植物のススキについて推定した。細かなモザイク構造ほど林床の光の空間変異は小さいがイチイガシの光合成ポテンシャルの高い場所は存在しなかった。ススキを抑制して、広いイチイガシ成長のエリアを確保するのには、伐採率25%の場合、樹高の70%から100%のギャップを持つ林冠モザイクが最適であった。
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