Research Abstract |
平成17年度はこれまでの研究に引き続き,土地利用の分析,安定同位体比分析,学会発表および研究成果の取りまとめを行った。土地利用の解析は北海道東部網走川流域の土地利用変化,湖沼内の底質・シジミ密度などの変化についてGISにより時系列的に解析を行った.とくに底質に関しては,河口部に細粒土砂が堆積する傾向にあり,その細粒土砂成分の割合とシジミ密度との相関が高かった.安定同位体比に関しては,網走湖南部の網走川河口,および網走湖北部の流出地点およびその中間地点においてシジミを採取・冷凍保存し,質量分析計にかけて窒素・炭素同位体比分析を行った.春季における炭素同位体比δ^<13>Cに関しては河口,流出口とも-19‰前後であり,中間地点(-17.5‰)に比べてやや低かった.窒素δ^<15>Nは9.6〜10.8‰の範囲でいずれの地点もかなり高く,これらの値は秋季においてもほとんど変化がなかった。一方陸上植物起源の有機物の同位体比は-27〜-28‰(δ^<13>C),-0.5〜-1‰(δ^<15>N)とシジミの値と大きくかけ離れており,陸上起源有機物の利用率はきわめて低いと結論付けられた.これまでの成果をまとめて,2005年9月にイタリア,ボローニャ市で行われたRiver Basin Management 2005で発表を行った.この会議では世界各地で流域管理にかかわる,工学的,水理学的,生態学的および社会学的な観点からの研究発表が行われており,流域管理がグローバルな問題であるということを強く印象付けられた.汚染源が点源から面源であるということが共通した特徴であり,この解決のためには住民に対する啓発と主体的な参加が重要で,そうした方向に流域マネジメントを今後行っていく必要があることが強調された.以上の成果を科学研究費成果報告書にまとめた.
|