2003 Fiscal Year Annual Research Report
ホウ素及びホウ素化合物が樹木生理ならびに木材防腐に関与する機構の解明
Project/Area Number |
15580150
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
湊 和也 京都府立大学, 農学研究科, 教授 (10026601)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古田 裕三 京都府立大学, 農学研究科, 講師 (60343406)
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Keywords | カキノキ / クロガキ / コクタン / ホウ素 / ICP分析 / 腐朽 |
Research Abstract |
日本産カキノキの黒変部(クロガキ)ではホウ素濃度が高く、またこの部位の耐朽性が高いことが見いだされている。しかし、それは限られたごく一部の試料についての結果であり、黒変部のホウ素濃度が普遍的に高いかどうかはこれまで明らかでなかった。平成15年度は、1)日本産カキノキの黒変部は白色部に比べて恒常的にホウ素濃度が高いかどうか、2)カキノキと同属のコクタンでも黒色部(心材)と白色部(辺材)でホウ素含有率に差異があるのか、3)ホウ素濃度を制御した土壌でカキノキを育苗し、ホウ素の取込量と生育状況を追跡する、の3点についての実験を行った。得られた結果は以下の通りに要約される。 出所の異なる7個体のカキノキの試料を供試し、黒変部から白色部にかけて黒色の程度の違いにより段階的に分割を行った。この試料を電気炉で灰化した後、硝酸に溶解し、ICP発光分析法によりホウ素濃度を測定した。その結果、すべての試料で黒色部から茶色の部分にかけてのホウ素濃度は数10ppmであるのに対して、白色部では約10ppm以下であり、明らかにホウ素濃度に差があることが判明した。日本産カキノキの黒色部は隣接して腐朽部を伴うのが一般的であり、黒色化は腐朽に対する防御機能の結果起こった現象と考えるのが妥当との結論に達した。一方、コクタンについても黒色部(心材)と白色部(辺材)でホウ素濃度はクロガキと同様の差異を示した。この場合、腐朽とは関連が無く、単なる辺材と心材の間での差であり、心材化に際してホウ素が取り込まれた結果を反映していると考えられる。 育苗実験より、土壌中のホウ素濃度が規定濃度(5.4ppm)の10倍まではカキノキはほぼ正常に成長したが、100倍以上では過剰傷害が発生し、その場合の、茎及び葉のホウ素濃度はクロガキ黒色部と同程度以上であった。なお、ホウ素の分析にはICP発光分析法を用いたが、クルクミン酸法による分光光度計(補助金で購入)を用いた比色定量でも測定可能なことが判明した。
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