Research Abstract |
和歌山県西岸において,バフンウニとムラサキウニの成長および生殖巣の発達が,生息する場所の海藻遷移の進行系列を反映するか否かを明らかにするために研究を行った。7月に,和歌山県美浜町沿岸の水深2.0mと5.3mにおける小型海藻群落,御坊市沿岸のヒバマタ目褐藻群落とカジメ群落の合計4地点に50cm×50cmの方形枠を3枠置いて生育する海藻を採集し,種別の湿重量を測定して5生活形群(谷口1996)に分類した。同地点で1m×1mの方形枠3枠とその周辺でバフンウニとムラサキウニを各50個体以上採集した。採集したウニの殻径,体重ならびに生殖巣重量を測定し,生殖巣指数(生殖巣重量×100/体重)を求めた。また,加熱した生殖板の輪紋数から年齢を査定し,第5生殖板の最大横幅と各輪紋横幅を計測して年齢と殻径との関係を求めた。 小型海藻群落は2地点とも小形多年生海藻が優占し,現存量は0.6kg/m^2以下であった。ヒバマタ目褐藻群落の現存量はジョロモクが71%を占めて1.6kg/m^2,カジメ群落ではカジメが87%を占めて6.6kg/m^2と著しく高かった。バフンウニの1m^2当たりの密度は,浅所の小形海藻群落で10個体,ムラサキウニはヒバマタ目褐藻群落で18.7個体と高かった。両種の生殖巣指数は,ヒバマタ目褐藻群落が他の群落よりも高かった。バフンウニの成長は,ヒバマタ目褐藻群落とカジメ群落が小型海藻群落よりも速かった。しかし,ムラサキウニの成長はヒバマタ目褐藻群落が他の群落よりも速く,カジメ群落に対しても有意な差が認められた。極相をなすカジメとヒバマタ目褐藻群落とでウニ2種の成長に相違が認められたが,それらは途中相をなす小形海藻群落より明らかに成長が速く,生殖巣が量的に発達し,遷移の進行系列を基本的に反映すると結論された。
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