2005 Fiscal Year Annual Research Report
エコフイジオロジーモデルによるヒラメ稚魚成育場機能の南北間比較
Project/Area Number |
15580164
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山下 洋 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 教授 (60346038)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 一生 水産総合研究センター, 東北区水産研究所, 研究員 (00301581)
|
Keywords | ヒラメ / 稚魚 / 成育場 / 環境収容力 / 南北差 / 栽培漁業 / モデル / 成長 |
Research Abstract |
本課題で開発したヒラメ稚魚の個体成長を予測するエコフィジオロジーモデルを核に、餌生物の生産モデル等を組み込んだ、ヒラメ稚魚個体群成長モデルを完成した。このモデルを、岩手県大野湾におけるヒラメ種苗放流再捕調査結果に適用して、最適放流量の推定を行った。放流魚は成育場の余剰生産力を利用し、天然ヒラメ稚魚の成長に影響を与えないという基準を用いると、平均全長8.9cmのヒラメ種苗を放流する場合、最適放流数は1989年6,000個体、90年放流余地なし、91年34,000個体という結果が得られた。最適放流数推定に対して、最も大きな変動要因は、天然ヒラメ稚魚の密度と大きさおよび主要な餌生物であるアミ類の密度であった。競争者となるアラメガレイ等の密度の変動は、大きな影響を与えなかった。大野湾では、89年に76,000尾、90年36,000尾、91年73,000尾を放流しており、これらの年に過放流であったことが示唆された。昨年度報告した、2000年、2003年の全国ヒラメ稚魚調査において、西日本の成育場でヒラメ天然稚魚の密度が高く、一方アミ類密度は低い傾向が明瞭であった。これを反映して、稚魚の摂餌状態も北日本の方が良好であり、成長速度も高いことが示された。すなわち、ヒラメの栽培漁業において、北日本の方がヒラメ成育場の余剰生産力が高く放流余地が大きいことが示唆された。そこで、今回開発したモデルにより最適な放流量を推定したところ、モデルによる予測は、最適放流量が北日本で高いという仮説を明確に支持した。ヒラメの栽培漁業は多くの県ですでに事業化され、大量放流が行われているが、環境収容力を基準として放流量が決められることはなく、放流量と放流効果の関係も、現在すでに過放流により放流効果が減少していることを示している。実効あるヒラメ栽培漁業の実施のためには、本課題で開発されたヒラメの最適放流量推定モデルなどを用いて、放流場(成育場)の生産力に対応した適正な量の種苗放流を行うことが急務であると結論された。
|
Research Products
(4 results)