2003 Fiscal Year Annual Research Report
わが国のシロザケ増殖事業のDNAレトロスペクティブ解析による再評価
Project/Area Number |
15580172
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
林崎 健一 北里大学, 水産学部, 講師 (80208636)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斉藤 憲治 東北区水産研究所, 海区水産業研究部, 室長
朝日田 卓 北里大学, 水産学部, 助教授 (00296427)
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Keywords | シロザケ / mtDNA / マイクロサテライトDNA / 鱗 / 成長解析 / 密度効果 / ふ化場集団 / 遺伝的多様性 |
Research Abstract |
わが国のシロザケふ化放流事業が本格的に立ち上がってから30年以上が経過した。増殖事業の成功とともにこの間に起こった小型化・高齢化現象はシロザケ自身の密度効果によると考えられている。一方、急激な稚魚放流数の増加により遺伝的な単純化が起こっている可能性もある。そこで、本研究では遺伝学的手法と生態学的手法の両方を同一集団に適用して、過去に振り返ってシロザケ増殖事業の量的、質的両面からの再評価を行おうとするものである。 遺伝学的手法に関しては、まず、シロザケのmtDNA約16000塩基対のほぼ全周の塩基配列を決定した。次に変異領域の確定のため地理的に離れた数河川からサンプル収集を行った。この情報をもとにmtDNAの部分配列を増幅するプライマーセットを作成し、多型分析に着手した。また、核DNA上に存在するマイクロサテライト領域に関してもプライマーセットを作成し、解析可能であることを確認した。鱗からのDNA抽出に関しても、回収量は少ないものの可能であった。DNA増幅はいずれの手法においても必ずしも安定しないことから、DNA回収に関してさらに精製を行う必要があろう。 生態学的手法に関しては、鱗を用いて海洋生活年における成長履歴を成長線間隔の計測という高精度のレベルで行うことにより推定した。サケ資源の増殖期、高位安定期、低位安定期を含む1970年代中ごろ以降の鱗を用いた。1980年代の高位安定期における回帰親魚の小型化は海洋生活1年目と回帰前年の成長低下によるものであり、密度効果の影響であることが再確認された。一方、最近の低水準期における成長パタンは、資源量が同程度である1980年代初頭のそれと大差ない程度まで回復していた。最近、岩手以外のサケ集団は'90年代後半の資源の一時的減少から回復しており、岩手の独自性が目立つ。現在本州の他系群と経年的な比較を行うべく解析中である。
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Research Products
(1 results)