2003 Fiscal Year Annual Research Report
輸入青果物の流通システムとトレーサビリティシステムに関する経済的研究
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15580191
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
慶野 征じ 千葉大学, 園芸学部, 教授 (40024591)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻井 清一 千葉大学, 園芸学部, 助教授 (60334174)
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Keywords | トレーサビリティ / 輸入農産物 / 流通機構 / 中国産野菜 / 開発輸入 / 食品の安全性 / インフラストラクチュア / 商品差別化 |
Research Abstract |
トレーサビリティは、生産、処理、加工、流通、販売の各段階で、食品とその情報を追跡し、または遡及できる社会的仕組みである。農産物では、生産段階における栽培履歴や流通段階における加工履歴・物流経路等の正確な情報把握と情報伝達のシステムである。 また、トレーサビリティは、食品の安全性や品質表示についての情報提供により、生産物の差別化や付加価値の追求をめざして生産者や流通業者が自発的に構築するシステムであるが、食品の安全性を確保するための社会的インフラストラクチュアでもある。消費者アンケートによれば、価格に転嫁できるトレーサビリティのコストは生産物価格の10%以内で、野菜では、Kgあたり30円が最大値と推定された。トレーサビリティ実証実験が試みられコスト低下が計られているが、多大な公的支出を必要としている。コメト負担の問題は今後の大きな課題であることがわかった。 1990年代以降、中国産野菜の輸入が急増したが、2002年には中国産輸入野菜から多量の残留農薬が検出され、トレーサビリティの必要性が認識された。中国産野菜は、日本の輸入業者が、開発輸入等で現地の輸出業者から輸入する。輸出業者は、集荷経費節減のため、農村在住の仲買人を通じて現地の農家から集荷し、調整加工し発送している。輸入業者は直接あるいは卸売市場を通じて量販店や業務用に販売する。輸出業者は低価格要求にこたえてコストの削減に努めてきたが、その結果商品管理が不十分となり、残留農薬事件を引き起こしたとの反省から、スポット買いを排除し、輸入業者による栽培指導の強化と生産管理の徹底が進められ、使用農薬や化学肥料の情報開示を行う動きもあることがわかった。 トレーサビリティは、輸入青果物にとってもインフラストラクチュアとして重要であり、そのコスト負担の配分が適正になされるならば、実現可能であることがわかった。
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