Research Abstract |
前年度の試験でアミン生成能がないことを確認したL.buchneri NK02株を用いて,実規模調製と泌乳試験を行った.黄熟期のトウモロコシホールクロップ(DM35%)を材料とし,L.buchneri凍結乾燥粉末を蒸留水に溶かして10^<10>cfu/tレベルで添加した.対照には蒸留水のみを添加し,2トン容のFRPサイロに2基ずつ詰め込んだ.約8ヶ月間貯蔵後,泌乳中期のホルスタイン種初産牛4頭を用い,反転法による採食試験を行った.給与飼料はL.buchneri添加あるいは無添加サイレージを50%含むTMRとし,予備期および本期はいずれも10日間とした.また,サイレージ単独あるいはTMR混合後の温度変化を記録して,好気的安定性を調べた.得られた結果は以下の通りである. 1)対照サイレージは典型的な良質サイレージであり,pHが3.6で乳酸が5.6%DMと優占していた.エタノールや酢酸も1.0%DM程度であったが,開封時にはサイレージ上面に少量のカビが見受けられた. 2)L.buchneriを添加すると,乳酸が4.5%DMに低下して酢酸が1.6%DMに増加した.1,2-プロパンジオールは0.4%DMであり,前年度の実規模調製試験に比べ生成量は3分の1程度であった.好気的変敗抑制機能は試料の採取部位による変動があったが,単独およびTMRのいずれでも確認された.通常TMRとすると好気的変敗は促進されるので,TMRでも温度上昇を遅延させたことは大きな成果である.また,サイレージ上面のカビはほとんどなかった. 3)DM摂取量(体重当たり)および乳量は,無添加区で3.63%および2.4kg/d,L.buchneri添加区で3.51%および25.2kg/dであった.また,乳脂肪,乳タンパク質,乳糖およびSNF含量も正常値であり,いずれも有意差はみられなかった. 4)今回調製したサイレージは1,2-プロパンジオールの生成量が少なかったが,同時に行ったL.buchneri培養液を添加した実験と比較すると,1,2-プロパンジオールはむしろ多めであった.そのため,実規模調製に適した凍結乾燥粉末は培養液に匹敵する効果を示すと考えられた.
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