2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15580286
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西村 亮平 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (80172708)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 伸雄 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (60107414)
桑原 正貴 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 助教授 (30205273)
大野 耕一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 助教授 (90294660)
望月 学 東京農工大学, 大学院・共生科学技術研究部, 助教授 (90261958)
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Keywords | 侵害刺激 / コルチゾール / 痛み / 麻薬 / フェンタニル / ケタミン / リドカイン / 全静脈麻酔 |
Research Abstract |
前年度までの検討で、血中コルチゾール濃度は、吸入麻酔による全身麻酔下の犬における侵害刺激の程度を良く反映し、術後疼痛の程度の指標ともなることが示された。そこで本年度は、全静脈麻酔下で様々な手術刺激を行った犬臨床例を用いて、比較的大量の麻薬性鎮痛薬を用いることによって侵害刺激が十分抑制できるか検討した。さらにこれに鎮痛補助薬を加えることによりさらに強い効果が得られるか検討した。 まず麻薬であるフェンタニル20μg/kgを1回注入後、20μg/kg/hrで持続投与を行ったときの侵害刺激遮断効果について、血漿中コルチゾール濃度の変化から評価を行った。その結果、麻酔導入直前、手術開始直前、手術開始30分後、および手術開始60分後の血漿中コルチゾール濃度の中央値(四分位範囲)は、5.7(3.1〜6.1)、3.8(2.7〜4.4)、5.5(4.0〜6.8)、および6.8(4.8〜8.5)μg/dlであり、以前に検討した鎮痛薬を投与しなかった場合と比較して上昇が大きく抑制されており、良好な侵害刺激遮断が得られたと考えられた。さらに、同量のフェンタニルに少量のケタミン(0.5mg/kgを1回注入後、0.6mg/kg/hrで持続投与)とリドカイン(2mg/kgを1回注入後、3mg/kg/hrで持続投与)を併用すると、麻酔導入直前、手術開始直前、手術開始30分後、および手術開始60分後の血漿中コルチゾール濃度の中央値(四分位範囲)は、5.1(4.2〜6.1)、4.0(2,9〜5.0)、3.5(2.4〜4.6)、および3.8(2.5〜8.5)μg/dlと上昇がほぼ完全に抑制されており、より効果的な鎮痛効果が得られることが明らかとなった。 このように血中コルチゾール濃度を指標とすることで、術中の侵害刺激遮断の程度を評価することができ、さらに麻薬と鎮痛補助薬の併用で、ほぼ完全な侵害受容抑制を達成することができることが明らかとなった。
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