2004 Fiscal Year Annual Research Report
特異な生物活性を有する異常アミノ酸含有環状ペプチドの全合成
Project/Area Number |
15590001
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
牧野 一石 千葉大学, 大学院・薬学研究院, 助教授 (20302573)
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Keywords | パプアミド / ポリオキシペプチン / GE3 / ハリペプチン / 触媒的不斉水素化反応 / β-ヒドロキシ-α-アミノ酸 / Ru / Ir |
Research Abstract |
本研究では特異な生物活性をもつ環状デプシペプチドであるGE3,ポリオキシペプチン,ハリペプチン,パプアミド,カリペルチンを対象として全合成に関する研究を行った。これらのペプチドは分子内に多数の構造異常アミノ酸を含有しており,これらをいかに光学的に純粋なかたちで化学合成するかが全合成を達成するうえで大きな鍵となる。とりわけアミノ酸の3位が酸化をうけたエリスロ型β-ヒドロキシ-α-アミノ酸の化学合成法において一般性の高い極めて重要な方法論を得ることに成功した。すなわち2-アミノ-3-ケトエステルを水素加圧下において,キラルなルテニウム錯体またはイリジウム錯体を作用させると,動的速度論的分割を伴う不斉水素化反応が進行しアンチ配置をもつβ-ヒドロキシ-α-アミノ酸を高い光学収率で得ることに成功した。キラルイリジウム錯体による動的速度論的分割を伴う不斉水素化反応は今までに例がなく,学問的にも価値ある発見につながった。本法は医薬品中間体の合成法の開発研究に発展しており,今後工業的にも重要な技術になることが期待できる。 さらに私はプロリン誘導体を用いた触媒的分子内不斉アルドール反応の開発にも取り組んでおり,ポリオキシペプチンの構成アミノ酸のひとつである3-ヒドロキシメチルプロリンの不斉合成にも成功した。 パプアミドに関しては,その構造が不明であった3-メトキシチロシンの立体化学を決定することに成功し,高収率で環状構造の構築に成功した。 一方,GE3,ポリオキシペプチン,ハリペプチンの合成に関しては,酸塩化物-Ag法,BMTB, DEPBTと呼ばれる最近開発された縮合剤が立体的にかさ高いペプチド結合形成に有効であることを提示するとともに,エステル結合形成にはNCS法が優れていることをあわせて見出すことに成功しており,いずれの化合物も合成の最終段階を迎えている。
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